「銀行口座が凍結された!」焦る前に知っておきたい、解除までの最短ステップと意外な落とし穴

はじめに:その時は突然やってくる

「葬儀費用を下ろそうと思ったら、ATMからお金が出ない……」
「窓口で亡くなったことを伝えたら、その場で通帳が使えなくなった」

大切なご家族を亡くされた悲しみの中で、こうした「口座凍結」の現実に直面する方は後を絶ちません。皆さま一様に、「まさかこんなにすぐに使えなくなるとは」「生活費はどうすればいいのか」と、不安な表情を浮かべていらっしゃいます。

銀行口座の凍結は、銀行側が「口座名義人が亡くなった」という事実を知った時点で即座に行われます。これは決してご遺族を困らせるための意地悪ではありません。故人の預金は、亡くなった瞬間に「遺産」となり、相続人全員の共有財産となるからです。一部の相続人が勝手に使い込むことを防ぐための、大切な保全措置なのです。

とはいえ、残されたご家族にとっては死活問題になりかねません。今回は、凍結解除(相続手続き)を最短で進めるためのステップと、多くの人がつまずくポイントについて、分かりやすくお話しします。

1. まずは深呼吸。「最短」を目指すなら「準備」が8割

「とにかく早く解除したい!」と、手元にある書類だけを持って銀行の窓口へ駆け込む方がいらっしゃいますが、これはかえって遠回りになることが多いです。

銀行の相続手続きは、通常の窓口業務とは全く別物と考えてください。非常に厳格な本人確認と、不備のない書類が求められます。書類が1枚でも足りなければ、「出直してください」と言われて終わりです。しかも、最近の銀行は相続手続きが「完全予約制」になっていることが多く、次の予約が2週間後……ということも珍しくありません。

最短で解除するための鉄則は、「一度の来店で全てを終わらせるレベルまで、完璧に書類を揃えてから動く」ことです。そのために必要な準備を見ていきましょう。

2. 最大の難関?「生まれてから死ぬまで」の戸籍集め

銀行での手続きにおいて、最初にして最大のハードルとなるのが「戸籍謄本」の収集です。

「戸籍なら役所で1通取ればいいんでしょう?」と思われるかもしれませんが、相続手続きでは「故人が生まれてから亡くなるまでの連続した全ての戸籍」が必要です。

今の戸籍(除籍謄本)には、亡くなった時の情報は載っていますが、その前の結婚前の情報、さらにその前の転籍前の情報は載っていないことがほとんどです。
例えば、80代で亡くなった方の場合、一生のうちに何度も本籍地を変えていることが一般的です。その場合、現在の役所だけでなく、以前住んでいた地域の役所へ郵送で請求をかけ、古い戸籍を遡っていく作業が必要になります。

これを一般の方がご自身でやろうとすると、

  1. 現在の役所で戸籍を取る
  2. 内容を読み解き、前の本籍地を特定する
  3. 定額小為替を買って、遠方の役所へ郵送請求する
  4. 1週間後に届いた戸籍を見て、さらに前の本籍地へ請求する……

この繰り返しで、戸籍集めだけで1〜2ヶ月かかってしまうこともザラにあります。ここをいかにスムーズに進めるかが、凍結解除への第一の鍵です。

3. 「誰が何を相続するか」が決まらないと動けない

戸籍が集まり、法的な相続人(誰が権利を持っているか)が確定したら、次は「遺産分割協議」です。つまり、相続人全員で「誰がこの預金を受け取るか」を決める話し合いです。

銀行は「争いごとの片棒」を担ぐことを極端に嫌います。そのため、

  • 法的に有効な遺言書がある
  • 相続人全員が実印を押した「遺産分割協議書」がある
  • 銀行所定の依頼書に相続人全員が署名・実印をする

このいずれかが揃わない限り、凍結を解除してくれません。

よくあるトラブルが、「兄弟のうち一人が遠方にいて連絡がつかない」「ハンコ代(協力への謝礼)でもめている」といったケースです。書類上の手続きよりも、実はこの「人間関係の調整」に時間がかかり、口座凍結が長引く原因となることが多いのです。

※なお、2024年3月1日から戸籍の広域交付制度が始まり、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍謄本等を取得できる制度です。これにより、相続手続きなどで必要な複数の戸籍を、最寄りの役所でまとめて請求できるようになりました(本人等に限定、顔写真付き身分証が必要など条件あり)。

4. 銀行ごとの「ローカルルール」にご注意を

書類が完璧に揃ったと思っても、まだ油断はできません。金融機関によって求められる書類や手続きのフローが微妙に異なるからです。

  • ゆうちょ銀行の場合: 全国の郵便局で受付可能ですが、書類を「貯金事務センター」に送付して審査するため、その場で現金は受け取れません。後日、代表者の口座に振り込まれるか、払戻証書が送られてくる形になります。完了まで2週間程度かかるのが一般的です。
  • メガバンク・地方銀行の場合: 前述の通り、事前の来店予約が必須なケースが増えています。また、独自の「相続届」への記入が必要で、その用紙を取りに行くだけでも手間がかかることがあります。

複数の銀行に口座を持っていた場合、それぞれの銀行で同じような説明と手続きを繰り返さなければなりません。「原本還付(げんぽんかんぷ)」という手続きをしておかないと、集めた戸籍一式を最初の銀行で回収されてしまい、次の銀行のためにまた取り直し……という悲劇も起こりますので、必ず「原本は返してください」と伝えましょう。

5. 当面の生活費が足りない!そんな時の「仮払い制度」

ここまで読んで、「そんなに時間がかかるなら、今月の生活費が払えない!」と青ざめた方もいるかもしれません。
安心してください。2019年の法改正で「預貯金の仮払い制度」が創設されました。

これは、遺産分割協議が整う前(話し合いが終わる前)であっても、一定の金額(一つの金融機関につき最大150万円までなど制限あり)であれば、相続人が単独で引き出せる制度です。
もちろん、これにも戸籍などの書類は必要ですが、「全員のハンコ」が揃うのを待たずに当面の資金を確保できるため、葬儀費用や入院費の支払いに困っている場合は、この制度の利用を検討してください。

6. 専門家に頼むべきラインはどこか?

ここまで、銀行口座凍結の解除(相続手続き)について、現場の目線でお伝えしました。
ご自身で手続きを行うことは法律上可能ですが、以下のような場合は、私たち行政書士のような専門家への依頼を検討してみても良いかもしれません。

  • 平日の日中に役所や銀行に行く時間が取れない
  • 故人が生まれてからの転居が多く、戸籍集めが難航しそう
  • 相続人が多く、書類のやり取りだけで疲弊してしまいそう
  • 銀行だけでなく、不動産や車の名義変更も控えている

専門家に依頼するメリットは、単に「代行してくれる」ことだけではありません。「戸籍の読み解きミスがないか」「将来的に揉めないような遺産分割協議書になっているか」といった法的リスクを回避できる点にもあります。

おわりに

銀行口座の凍結は、大切な方を亡くされた後に訪れる、現実的でシビアな問題です。
焦る気持ちは痛いほど分かりますが、急がば回れ。まずは落ち着いて、一つひとつのステップを確認することが、結果として最短の解決につながります。

もし、「何から手をつけていいか分からない」「戸籍の収集で行き詰まってしまった」という場合は、おひとりで悩まず、地元の行政書士にお気軽にご相談ください。
皆様の心の負担が少しでも軽くなるよう、誠心誠意サポートさせていただきます。


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※本記事の内容は、執筆時点の法令・情報に基づき一般的な解説を提供するものであり、特定の事案についての助言・判断を目的としたものではありません。実際の手続きや対応方法は、状況・地域・関係機関・契約内容等によって大きく異なります。そのため、本記事のみを根拠として判断・行動されることはお控えいただき、個別の事情に応じた専門家への相談をおすすめいたします。本記事の内容に基づき生じたトラブル・損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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