「親が亡くなってから数ヶ月、突然届いた一通の督促状。そこには亡くなった父が友人の借金の『連帯保証人』になっていたという事実が……」
相続の現場では、このようなドラマのような、けれど笑えない現実に直面することがあります。預貯金や不動産といった「プラスの財産」だけでなく、実は借金などの「マイナスの財産」も引き継いでしまうのが相続の怖いところです。
今回は、意外と知られていない「保証債務の相続」について、私たち行政書士の視点から分かりやすく解説します。
1. 「保証人の地位」はバトンタッチされてしまう
結論からお伝えすると、亡くなった方が負っていた連帯保証人としての義務(保証債務)は、原則として相続人が引き継ぎます。
「本人が借りたお金じゃないんだから、亡くなれば消滅するでしょう?」と考えたいところですが、法律上、保証債務は立派な相続対象です。もし相続人が複数いる場合は、その法定相続分に応じて分割された債務を引き継ぐことになります。
つまり、親が誰かの借金の身代わりになる約束をしていた場合、その「身代わりになる義務」もセットで子どもたちが引き継がなければならないのです。
2. 相続される保証・されない保証の違い
ただし、全ての保証が相続されるわけではありません。ここが実務上の重要な分かれ目となります。
- 相続されるもの:通常の連帯保証債務
銀行からの借入れや、知人の借金の保証人など。金額が特定されているもの、または特定の契約に基づいたものです。 - 相続されないもの:身元保証など
就職の際の「身元保証」のように、亡くなった本人の個性を重視するような属人的な保証は、一般的に相続されないと解釈されています。
まずは、親が「どのような種類の保証」をしていたのかを見極める必要があります。
3. 【調査編】隠れた保証債務を見つけるためのチェックリスト
親が「実はあいつの保証人になっていてね……」と正直に話してくれるケースは稀です。多くの場合、相続が始まってから発覚します。では、どうやって調べればいいのでしょうか。
【まずは自宅でこれを確認!】
- 金銭消費貸借契約書の控え(契約書類のファイル)
- 催告書や督促状(見慣れない金融機関からの郵便物)
- 通帳の履歴(代位弁済などで定期的に数万円引かれていないか)
これらが見当たらない場合でも、信用情報機関(JICC、CIC、全銀協)へ開示請求を行うことで、金融機関からの借入状況や保証状況を把握することが可能です。
4. 最善の対策「相続放棄」とその注意点
「親の借金を背負ってまで相続したくない!」という場合、もっとも確実な対策は裁判所への「相続放棄」の手続きです。
相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったことになり、プラスの財産もマイナスの財産(保証債務)も一切引き継がなくて済みます。ただし、これには厳しいルールがあります。
【注意!】相続放棄の期限
原則として、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。
「まだ四十九日も終わっていないし……」とゆっくりしていると、あっという間に期限が来てしまうため、早めの判断が求められます。
5. 「3ヶ月」を過ぎてから発覚した時の救済策はあるか
もし、親が亡くなってから半年、1年と経った後に、寝耳に水の「保証債務」が発覚した場合はどうなるのでしょうか。
法律上は「3ヶ月以内」が原則ですが、最高裁判所の判例により、「借金の存在を知ることができなかった相当の理由」があると認められれば、その事実を知った時から3ヶ月以内であれば相続放棄が受理される可能性があります。
「もう手遅れだ」と諦めて督促状を放置するのが一番の悪手です。まずは専門家に相談し、個別具体的な事情を整理しましょう。
6. 行政書士が教える、家族を守るための備え
相続が始まってから慌てないためには、生前のコミュニケーションが不可欠です。しかし、お金の話は親子でも切り出しにくいもの。そんな時は「エンディングノート」などを活用して、さりげなく資産と負債の状況を共有するきっかけを作ってみてください。
私たち行政書士は、相続発生後の手続きはもちろん、生前の遺言書作成や財産調査を通じて、こうした「負の遺産」による家族のトラブルを防ぐお手伝いをしています。
「保証人」という言葉には、かつての優しさや人間関係が隠れていることもありますが、残された家族にとっては生活を脅かすリスクになりかねません。不安を感じたら、まずは現状を正しく把握することから始めましょう。
🔍 保証債務の相続クイズ 🔍
親が友人の借金の「連帯保証人」になっていた場合、その義務(保証債務)は子どもが相続することになりますか?
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