行政書士として書類作成の業務に携わっていると、どんなに注意をしていても、ふとした瞬間にヒヤリとすることがあります。
その代表格が「収入印紙」の貼り間違いです。
「あ!金額を間違えた!」
「貼った後に、契約書の文字が間違っていることに気づいた…」
特に、建設業の請負契約書や、不動産売買契約書などは、印紙の額面が1万円、2万円と高額になることも珍しくありません。そんな高価な切手のような紙片を、一瞬のミスで無駄にしてしまった時の絶望感と言ったらありません。
でも、安心してください。
その失敗した印紙代、きちんとした手順を踏めば、お金が戻ってくる(還付される)可能性があります。
今回は、意外と知られていない「印紙税の還付手続き」について、分かりやすく解説します。決してその契約書を丸めて捨てないでくださいね。
1. 郵便局では交換してくれない?還付の基礎知識
まず、最初にお伝えしたい最も重要なことは、「郵便局に行っても返金はしてもらえない」ということです。
書き損じたハガキや切手は、郵便局で手数料を払えば交換してもらえますよね。その感覚で、「印紙も交換してよ」と郵便局の窓口に行かれる方がいらっしゃいますが、これは管轄が違います。
収入印紙は「税金」を払うためのものです。したがって、相談に行くべき場所は「税務署」になります。
専門用語では「印紙税過誤納確認申請(いんしぜい かごのう かくにん しんせい)」と言います。漢字ばかりで難しそうですが、要は「間違って納めすぎた税金を返してください」という手続きです。
これを行うことで、現金で口座に振り込まれる形で還付を受けられます(新しい印紙との交換ではありません)。
2. どんな時に返してもらえるの?代表的な3つのケース
では、具体的にどのようなケースであれば、還付が認められるのでしょうか。印紙税法では、主に以下の3つのパターンが定められています。
1. 印紙の金額を過大に貼ってしまった場合
例えば、本来200円の印紙で良い契約書に、間違って4,000円の印紙を貼ってしまった場合です。この場合、差額の3,800円が還付の対象になります。
2. 課税文書ではないものに誤って貼ってしまった場合
「この書類には印紙が必要だ」と思い込んで貼ったものの、後で調べたら、実は印紙税がかからない文書(不課税文書)だった、というケースです。
例えば、契約書のコピー(写し)や、金額の記載がない特定の覚書などがこれに当たります。また、PDFでやり取りする「電子契約」なのに、うっかりプリントアウトして印紙を貼ってしまった場合も対象になります。
3. 書類の作成自体をミスした場合(書き損じ)
印紙を貼ったものの、契約書の宛名を間違えていた、金額の桁を間違えていたなどで、その契約書自体が使えなくなってしまった場合です。
これが実務では一番多いケースかもしれません。そのまま破棄せず、還付手続きを行いましょう。
3. 【超重要】絶対にやってはいけない「NG行動」
ここで、この記事の中で一番大切なことをお伝えします。
ミスに気づいた時、焦って「印紙を剥がそう」としないでください。
還付を受けるための大原則は、
「間違った文書に、印紙が貼られたままの状態であること」です。
「別の紙に貼り直そう」
「剥がして台紙に戻そう」
これは絶対にNGです。一度貼った印紙を剥がしてしまうと、「再使用(使い回し)」を疑われてしまいます。たとえ綺麗に剥がせたとしても、税務署は還付を認めてくれません。また、印紙部分だけを切り取って持参するのもダメです。
契約書が書き損じでボロボロになっても構いません。恥ずかしがらず、「印紙が貼られたままの契約書」を丸ごと税務署に持参してください。これが鉄則です。
4. いざ税務署へ!手続きの流れと持ち物
では、実際の手続きの流れを簡単に整理しましょう。
- 管轄の税務署へ行く
会社の所在地や、納税地を管轄する税務署に行きます。 - 必要書類を提出する
「印紙税過誤納確認申請書」という書類を提出します。これは税務署の窓口にもありますし、国税庁のサイトからダウンロードも可能です。 - 現物(間違えた契約書)を提示する
先ほどお伝えした、印紙が貼られたままの文書を提示します。税務署員が確認した後、文書はその場で返却されるか、確認印を押されて戻ってきます。 - 後日、口座に振り込まれる
その場で現金がもらえるわけではありません。後日(数週間〜1ヶ月程度)、指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。
【持ち物リスト】
- 印紙税過誤納確認申請書(窓口でも書けます)
- 印紙を貼り間違えた文書(現物)
- 印鑑(法人の場合は代表者印など)
- 還付金を受け取る口座番号がわかるもの
なお、消印(ハンコ)を押してしまった後でも、この手続きは可能です。「ハンコを押しちゃったからもうダメだ」と諦める必要はありません。
5. 行政書士からのアドバイス:コスト意識とリーガルチェック
たかが数百円、数千円の話と思うかもしれませんが、ビジネスにおいて「無駄な税金を払わない」というのは、立派な経営判断であり、コスト管理です。
手続き自体はそれほど難しくありませんが、わざわざ税務署に行く手間を考えると、やはり「最初から間違えないこと」に越したことはありません。
また、そもそも「この契約書にはいくらの印紙が必要なのか?」という判断自体が難しいケースも多々あります。
第2号文書(請負)なのか、第7号文書(継続的取引)なのかによって、税額が大きく変わることもありますし、記載の仕方一つで節税できることもあります。
6. おわりに
人間ですから、ミスは誰にでもあります。
貼り間違えてしまった時は、深呼吸をして、決して剥がさずに税務署へ相談に行きましょう。
そして、これから作成する重要な契約書については、
「この内容で法的に問題ないか?」
「印紙税などのコストは適正か?」
といった観点も含めて、ぜひ私たち行政書士にご相談ください。
正確な契約書の作成は、御社の利益を守り、無用なトラブル(そして無用な出費)を防ぐための第一歩です。日々の事務手続きの「困った」があれば、お気軽にお声がけください。
📝 収入印紙と契約書の常識クイズ 📝
【第1問】契約書に高額な収入印紙を間違えて貼ってしまいました。返金してもらうために行くべき場所はどこでしょうか?
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