【相続の落とし穴】「普通養子」と「特別養子」でまったく違う?相続権と戸籍のルールを解説

日々の業務の中で、相続に関するご相談を受けていると、「養子縁組」が関わってくるケースに遭遇します。

「孫を養子にすれば相続税対策になると聞いた」
「再婚相手の連れ子と養子縁組をしたい」

きっかけは様々ですが、実は「養子」には大きく分けて2つの種類があることをご存じでしょうか?
「普通養子縁組」「特別養子縁組」です。

名前は似ていますが、法律上の扱いは驚くほど異なります。特に「実の親(実親)との関係」がどうなるかによって、将来発生する「相続」の権利関係が激変してしまうのです。

今回は、行政書士としての視点から、教科書的な法律論だけでなく、実際の相続現場で重要となるポイントに絞って、この2つの違いを分かりやすく解説します。

1. なぜ「2つの養子縁組」が存在するのか?

まず、大前提としてこの2つの制度は、その「目的」が全く異なります。

「普通養子縁組」は、古くからある制度で、「家の跡継ぎが欲しい」「遠縁の親戚の子を育てたい」「相続税対策で孫を養子にしたい」といった、大人の事情や家(いえ)の存続を含めた幅広い目的で利用されます。皆さんが一般的にイメージする「養子」のほとんどはこちらでしょう。

一方、「特別養子縁組」は、昭和62年に新設された比較的新しい制度です。これは、虐待や経済的理由などで実の親が育てられない子供(原則15歳未満など年齢制限あり)を、温かい家庭環境で育てるための「子供の福祉」を目的とした制度です。

出発点が違うため、当然ゴール(法的効果)も違ってきます。

2. 「普通養子」の場合、実の親との関係はどうなる?

普通養子縁組の最大の特徴は、「実の親との親子関係が切れない」という点です。

例えば、AさんがB家の養子になったとします。Aさんには新しい「養親」ができますが、生んでくれた「実親」との縁もそのまま残ります。
法律上、Aさんには「2組の親」が存在することになります。

これが相続において何を意味するかというと、「ダブルで相続権が発生する」ということです。

  • 養親が亡くなれば、Aさんは養子として相続人になります。
  • 将来、実の親が亡くなった際も、Aさんは実子として当然に相続人になります。

「両方から相続できてお得だ」と思われるかもしれませんが、逆に言えば、実家の親の介護義務や、実家の借金を相続してしまうリスクとも無縁ではいられない、ということです。ここが実務上、後からトラブルになりやすいポイントでもあります。

3. 「特別養子」の場合、実の親との関係はどうなる?

特別養子縁組の最大の特徴、それは「実の親との親子関係が完全に消滅する」ことです。

家庭裁判所の厳しい審判を経て特別養子縁組が成立すると、法律上、その子は「養親の実子」と同じ扱いになります。その代償として、生みの親との法的な縁はバッサリと切断されます。

したがって、相続における扱いは以下のようになります。

  • 養親の相続: 実子と全く同じ立場で相続権を持つ。
  • 実親の相続: 相続権は一切なし。

どんなに血が繋がっていようと、法的には「他人」となるため、実親が亡くなっても相続人にはなりませんし、実親の扶養義務も負いません。子供が新しい家庭で、過去のしがらみに囚われずに育つための強力な法的措置と言えます。

4. 意外と知らない「戸籍」の記載の違い

この2つの違いは、戸籍の記載を見ると一目瞭然です。私たち行政書士が相続業務で戸籍を収集する際、真っ先に確認する部分でもあります。

【普通養子縁組の場合】

養親の戸籍には、「養子」という身分事項がはっきりと記載されます。
また、続柄の欄には「養子」や「養女」と記されます。
誰が見ても「ああ、養子縁組をしたんだな」と分かる記載ぶりです。

【特別養子縁組の場合】

こちらはプライバシー保護の観点から、記載が非常に配慮されています。
原則として、養親の戸籍の続柄欄には「長男」「長女」といったように、実子と同じ記載がなされます。一見しただけでは養子とは分かりません。
ただし、身分事項欄を詳細に見れば「民法817条の2による裁判の確定日」といった記載があるため、専門家が見れば分かりますが、普通養子に比べると「実の子」として扱うという法の強い意志が感じられます。

5. 相続税対策としての養子縁組の注意点

よく「孫を養子にすると相続税が安くなる」という話を聞きます。これは、相続人の数(法定相続人の数)が増えることで、基礎控除額が増える(3000万円+600万円×相続人の数)ため、確かに間違いではありません。

しかし、これはあくまで「普通養子縁組」の話です。

特別養子縁組は、前述の通り「子供の福祉」が目的であり、要件も厳格(原則として子供が15歳未満であること、実親の同意があること、6ヶ月以上の試験養育期間があること等)です。「節税したいから特別養子縁組をしよう」といって簡単にできるものではありません。

また、普通養子縁組であっても、明らかに「不当に相続税を減らすためだけ」に行われたと税務署に判断された場合、相続人の数に含めることが否認されるケースもあります。安易な縁組はリスクを伴うことを覚えておいてください。

6. 遺産分割協議で揉めないために

相続が発生し、いざ遺産分割協議(遺産の分け合いの話し合い)をする段になって、「会ったこともない腹違いの兄弟」や「昔、養子に出たきりの兄弟」が登場し、話がまとまらなくなるケースは決して珍しくありません。

特に普通養子縁組の場合、実親との関係が切れていないため、実家の兄弟姉妹との間で「あいつは養子に行ったのに、実家の遺産も持っていくのか」という感情的な対立が生まれがちです。

法律上は権利があっても、心情的な納得感は別問題です。
養子縁組が絡む相続においては、当事者だけで話し合うと感情論になりやすいため、第三者である専門家を間に入れることが、円満な解決への近道となることが多いです。

7. 行政書士としての視点:戸籍謄本の重み

私たち行政書士は、相続手続きの第一歩として、亡くなった方の「生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍」を集める作業を行います。

明治、大正、昭和の古い手書きの戸籍を読み解いていくと、そこには何度も養子縁組と離縁を繰り返していたり、複雑な家族関係が記されていたりすることがあります。戸籍は単なる公文書ではなく、その方の「人生の歴史」そのものです。

普通養子なのか、特別養子なのか。
その一行の違いが、残されたご家族の人生を大きく左右します。

ご自身の家系図がどうなっているのか、養子縁組をしている場合、将来どのような相続関係になるのか。不安な点がある場合は、元気なうちに一度、正確な戸籍を確認し、専門家に相談しておくことを強くお勧めします。

今回のまとめ

  • ■普通養子
    実親・養親の両方と親子関係が続く(相続権もダブル)。
  • ■特別養子
    実親との縁は切れ、養親の実子同然となる(実親の相続権は消滅)。

「養子」という言葉だけでひとくくりにせず、それぞれの制度の目的と効果を正しく理解することが、将来の円満な相続への第一歩です。
相続関係図の作成や戸籍の調査など、少しでも不明な点があれば、お近くの行政書士までお気軽にご相談ください。

※本記事の内容は、執筆時点の法令・情報に基づき一般的な解説を提供するものであり、特定の事案についての助言・判断を目的としたものではありません。実際の手続きや対応方法は、状況・地域・関係機関・契約内容等によって大きく異なります。そのため、本記事のみを根拠として判断・行動されることはお控えいただき、個別の事情に応じた専門家への相談をおすすめいたします。本記事の内容に基づき生じたトラブル・損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

普通養子と特別養子の違いクイズ

【第1問】「普通養子縁組」をした場合、実の親(実親)との法的な関係はどうなりますか?

✅ 全問終了!お疲れ様でした。

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