非農地証明(現況証明)とは?登記は「田」だけど実は宅地…の是正手続き

行政書士の山田です。

「実家を処分しようと買主も見つかったのに、銀行から『融資できません』と言われたんです。」
現地に行ってみると、そこにあるのはどう見ても普通の古い一軒家。庭があり、駐車場があり、誰がどう見ても「宅地」です。

しかし、登記簿(全部事項証明書)を取り寄せてみると、地目の欄にはくっきりと「田」の文字。
そう、見た目は家でも、法律上はまだ「農地」のままだったのです。

実はこれ、田舎の土地や、昔からある本家などでは決して珍しい話ではありません。今回は、この厄介な「登記と現況のズレ」を解消する「非農地証明(現況証明)」について、わかりやすくお話しします。

1. 売買契約の直前に発覚!「この土地、売れません」の衝撃

不動産の売買において、地目が「農地(田・畑)」のままだと、原則として農家以外の人には売却できません。
さらに、住宅ローンなどの銀行融資も、対象物件が農地だと審査が通らないことがほとんどです。

「契約日が近いのにどうしよう!」
「今まで普通に住んでいたのに、なんで?」

とパニックになるのも無理はありません。
通常、家を建てる前には「農地転用許可」を取って地目を変えるのですが、数十年前に親の代で家を建てた際、「許可を取るのを忘れていた」あるいは「手続きが面倒でそのままにしていた」というケースが、今になって発覚することが多々あるのです。

2. 農地転用とは違う?「非農地証明」ってなに?

通常、畑や田んぼを宅地にするには、事前に農業委員会へ「農地転用(4条・5条許可)」の申請が必要です。「これから農地を辞めますよ」という許可ですね。

しかし、今回のようなケースは少し事情が違います。
「これから辞める」のではなく、「もう何十年も前から農地じゃない」のです。

このように、「過去に農地以外のものに変わっており、現在も農地として使えず、将来も農地に戻る見込みがない」ことを、農業委員会に公式に認めてもらう手続き。それが「非農地証明(現況証明)」願です。

ざっくり言うと…

お役所に対して
「今さら農地転用の許可申請をするのはおかしいですよね? だって、もうずっと前から宅地なんですから。今のありのままの姿(非農地)であることを証明してください」
とお願いする手続きです。

3. 「20年の壁」が運命を分ける

「じゃあ、勝手に宅地にしてしまった土地は、全部これで解決できるの?」

というと、残念ながらそう甘くはありません。ここには「20年」という大きな壁が存在することが多いのです(※自治体により基準は異なります)。

一般的に、無許可で農地を潰してしまった場合、それは「違反転用」として、元の農地に戻すよう命令される可能性があります。しかし、その状態が20年以上続き、かつ平穏に(隠したりせず公然と)使用されてきた場合、「時効」に近い考え方で、現状を追認してもらえるケースがあるのです。

つまり、非農地証明が取れるかどうかの最大のポイントは、「いつから農地じゃなくなったか」を証明できるかにかかっています。

4. 証拠探しはまるで探偵?必要な書類とは

「昔から家が建っていたよ」という口頭の説明だけでは、役所は動いてくれません。客観的な証拠が必要です。
この手続きを行うとき、まるで探偵のように証拠を集める必要があります。

  • 過去の航空写真
    国土地理院のデータベースなどで、20年前、30年前の空撮写真を探し出し、「ほら、この時点で家が建っています」と示します。
  • 建物の登記事項証明書
    建物がいつ新築されたかの記録です。
  • 課税証明書
    固定資産税がいつから「宅地並み」で課税されていたかの履歴です。
  • 電気・ガスの検針票や領収書
    古い生活の痕跡を探します。

これらを積み上げて、「違反状態の是正」ではなく、「現況の確認」として認めてもらうのです。

5. 地目を「宅地」に変えるメリット・デメリット

苦労して非農地証明を取得し、法務局で地目変更登記を行って、ようやく登記簿が「宅地」になります。

【メリット】

  • 売却が可能になる:農地のままだと、農家以外の人には原則売れません。宅地になれば誰にでも売れます。
  • 融資が通る:住宅ローンの担保として認められるようになります。
  • トラブル予防:将来の相続の際、「なんだこの土地は?」と子供たちが困るのを防げます。

【デメリット】

  • 税金が変わる可能性:もしこれまで「農地」として安く課税されていた場合、固定資産税が上がる可能性があります(※既に宅地並み課税されている場合は変わりません)。

6. 自分でやるにはハードルが高い理由

「証明書をもらうだけなら自分で……」と思われるかもしれません。
しかし、非農地証明は「本来なら違反である状態を、特例的に認めてもらう」という、非常にデリケートな手続きです。

農業委員会の総会で審議される必要があり、単に書類を出すだけでなく、現地の状況説明や、なぜそうなったかの経緯書(始末書のようなもの)が必要になることもあります。
もし書類の不備で「これは単なる違反転用ですね」と判断されてしまうと、最悪の場合、現状復旧(家を壊して畑に戻せ)という命令が出ないとも限りません。

7.放置せず、まずは「現状把握」から

ご実家の登記簿、見たことはありますか?
もし、家が建っているのに「田」「畑」になっていたら、それは放置爆弾を抱えているようなものです。

いざ「売りたい」「貸したい」と思ったその時に動いても、手続きには数ヶ月かかります。その間に買い手が逃げてしまうことも……。

「うちはどうなんだろう?」と不安に思ったら、まずは地元の行政書士にご相談ください。古い航空写真を見ながら、一緒にタイムスリップをして、土地の歴史を紐解いていきましょう。

※本記事の内容は、執筆時点の法令・情報に基づき一般的な解説を提供するものであり、特定の事案についての助言・判断を目的としたものではありません。実際の手続きや対応方法は、状況・地域・関係機関・契約内容等によって大きく異なります。そのため、本記事のみを根拠として判断・行動されることはお控えいただき、個別の事情に応じた専門家への相談をおすすめいたします。本記事の内容に基づき生じたトラブル・損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

農地と登記の法律クイズ

何十年も前から家が建っているのに、登記簿上の地目が農地のままの場合、現在のありのままの姿(非農地)であることをお役所に証明してもらう手続きを何と呼ぶでしょうか?

クイズクリア!お疲れ様でした。

土地の歴史を紐解き、複雑な手続きを安全に進めるには、専門家のサポートが不可欠です。そのまま放置せず、まずは現状把握から始めましょう。

面倒で複雑な手続きは、行政書士やまだ事務所にお任せください!ご相談はこちらから

【事務所概要】
行政書士やまだ法務事務所
代表者:山田 勉
所在地:奈良県生駒郡平群町光ヶ丘1丁目3番5号 (ご来所は、全予約制です。)
電 話:0745-45-6609 (受付時間 午前9時~午後5時)
F A X : 0745-60-3033 (24時間受付)
メール :お問い合わせ
休業日:土日・祝日・年末年始       ※予めご連絡いただければ休日対応いたします。
対象地域:奈良県、大阪府・京都府の一部  ※オンライン面談やご自宅への訪問をいたします。