はじめに:遺言書は「一度書いたら終わり」ではありません
「数年前に遺言書を書いたから、自分の相続対策はもう完璧だ」。そう安心されている方は少なくありません。しかし、行政書士として日々ご相談をお受けしていると、「昔書いた遺言書が、今の状況に合わなくなっている」というケースにに遭遇します。
遺言書は、作成した当時のご自身の意思を形にしたものです。しかし、長い人生において、家族の状況や財産の内容は常に変化していきます。民法でも、遺言書はいつでも、何度でも撤回や書き直しができると定められています。
遺言書は「一度書いたら終わり」の書類ではなく、ご自身の現状に合わせて定期的にメンテナンスしていくべきものです。今回は、行政書士の目線から、遺言書を見直し、書き直すべき「3つの重要なタイミング」について分かりやすく解説いたします。
タイミング①:相続人の構成が変わったとき(誕生、死亡など)
最も分かりやすく、かつ早急に見直しが必要になるのが、ご家族(相続人)の構成に変化があったときです。
例えば、遺言書を作成した後に、お孫さんが生まれたり、養子縁組をしたりして、新たに財産を譲りたい相手が増えることがあります。逆に、遺言書の中で「全財産を相続させる」と指定していた配偶者やご兄弟が、ご自身より先に亡くなってしまうことも考えられます。
もし、財産を受け取るはずだった方が先に亡くなってしまった場合、遺言書のその部分は原則として無効になってしまいます(代襲相続という複雑な問題も絡んできます)。「この財産は誰に渡るのだろう?」と遺されたご家族を混乱させないためにも、身近な方の誕生やご不幸があった際は、必ず遺言書を棚卸しして書き直すようにしてください。
タイミング②:相続人との関係性が変わったとき(離婚、不仲など)
戸籍上の変化だけでなく、心の距離や実際の関係性が変わったときも、遺言書を見直す重要なタイミングです。
代表的な例が「離婚」です。離婚すると元配偶者は相続人ではなくなりますが、過去に書いた遺言書に「妻(夫)〇〇に財産を相続させる」と記載したまま放置していると、死後に大きなトラブルの火種となります。
また、「長男に家を継がせるつもりで遺言を書いたが、その後ひどく疎遠になってしまった」「同居して老後の面倒を見てくれている次女に、より多くの財産を残してあげたい」といった、ご家族に対するお気持ちの変化もあるでしょう。
ご自身の財産を誰に託すかは、ご本人の自由です。今の気持ちと遺言書の内容にズレが生じてきたと感じたら、迷わず書き直しをご検討ください。
タイミング③:財産の状況が大きく変わったとき(不動産の売買など)
家族構成だけでなく、ご自身の財産に大きな増減があった場合も要注意です。
たとえば、遺言書に「Aの土地と建物は長男に相続させる」と書いていたにもかかわらず、生前にその不動産を売却して現金化してしまったとします。この場合、遺言書に書かれている不動産はすでに存在しないため、その部分は効力を失います。では、その売却代金(現金)はどうなるかというと、原則として遺産分割協議の対象となり、ご家族での話し合いが必要になってしまいます。
また、事業が成功して預貯金が大幅に増えた場合、当初の遺言書のままでは、特定の相続人の「遺留分(法律で保障された最低限の取り分)」を侵害してしまい、死後に相続人同士で裁判沙汰になるリスクも生じます。大きな買い物や売却をした後は、一度専門家に遺言書をチェックしてもらうのが安心です。
見直さないとどうなる?古い遺言書が引き起こすトラブル
現状に合わない古い遺言書を放置していると、どのような事態を引き起こすのでしょうか。
最も恐ろしいのは、「争族(そうぞく)」と呼ばれる親族間の骨肉の争いを誘発してしまうことです。ご家族は「お父さんはあんな風に言っていたのに、遺言書の内容が違う」「これはずっと昔に書かれたもので、今の父の気持ちではないはずだ」と疑心暗鬼になり、不満を募らせてしまいます。
せっかくご家族を想って書いた遺言書が、逆に家族をバラバラにする原因になってしまっては本末転倒です。遺言書に複数のバージョンが存在する場合、法律上は「日付の新しいものが優先される」という大原則があります。現状に合わないと思ったら、新しい日付でしっかりと現在の意思を残しておくことが、最大のトラブル予防策となります。
自筆から「公正証書遺言」への書き直しをおすすめする理由
もし現在、ご自身で手書きされた「自筆証書遺言」をお持ちで、書き直しを検討されているのであれば、当事務所としては「公正証書遺言」での作り直しを強くおすすめいたします。
過去のブログ記事でも何度か触れておりますが、自筆の遺言書は、書き方のルール(全文手書き、日付の明記、押印など)が厳格で、少しのミスで無効になってしまう危険性が常に付きまといます。また、書き直しの際も、二重線を引いて訂正印を押して……という細かいルールがあり、失敗しやすいのが実情です。
公証役場で作成する公正証書遺言であれば、法律のプロである公証人が関与するため、無効になるリスクは極めて低くなります。また、ご家族が亡くなった後に家庭裁判所で行う「検認」という煩雑な手続きも免除されるため、遺されたご家族の負担を劇的に減らすことができます。書き直すというこのタイミングを機に、より確実で安心な方法へシフトしてみてはいかがでしょうか。
まとめ:定期的な見直しで、ご家族の安心を守りましょう
遺言書は作成して終わりではなく、車の車検のように「定期的な見直し」が必要です。「家族が増えた・減った」「関係性が変わった」「財産が変わった」の3つのサインを見逃さず、適宜アップデートしていくことが大切です。
「今の自分の状況だと、遺言書を書き直した方がいいのだろうか?」「公正証書遺言にするにはどうすればいい?」と少しでも不安を感じられたら、ぜひお近くの行政書士にご相談ください。
当事務所でも、ご相談者様お一人おひとりのご家族の状況や財産背景を丁寧にお伺いし、最適な遺言書の形をご提案させていただいております。ご家族の未来の安心を守るため、いつでもお気軽にお声がけください。
📝 遺言書の見直し・書き直しクイズ 📝
遺言書を作成した後に、財産を譲る予定だった人が先に亡くなってしまいました。この場合、遺言書のその部分の効力はどうなるでしょうか?
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