相続した農地はすぐに売れる?

1.はじめに

「親の農地を相続したけど、使わないので売ってしまいたい」と考える方は多いでしょう。ですが、農地を売る前には「相続したことの証明」「法律で決まった手続き」が必要で、思い立ってすぐに売れるわけではありません。最近の法改正で、相続登記が義務になったことなど、土地をめぐるルールが厳しくなってきています。この記事では、相続した農地を売るときにまず知っておきたいことを、専門用語をなるべく使わずに丁寧に解説します。

2. 相続したらまず必要な手続き:登記と届出

農地を相続したら、最初にするべきことが「相続登記」です。これは、親などから土地の権利をあなた自身の名義にする手続きで、不動産登記所(法務局)で行います。名義が親のままだと、売買契約をしても手続きが進められないことがあります。
また、農地であれば「相続した」ということを農業委員会に届け出る必要があります。これは「農業をする人が農地を管理するべきか」「将来どう使うか」の判断に関わる大切な記録です。これらをきちんとしておかないと、売るときや賃貸に出すときに問題が出ることが多いです。
さらに、2024年4月1日から「相続登記義務化」がスタートしています。つまり、土地を相続したと知った日(または所有権を取得したと知った日)から3年以内に相続登記をしなければならないという義務が法律で定められたのです。遅れた場合は罰則(過料)が科されることがあります。
これらの手続きを最初に済ませておくことが、「農地を売る道」をつくる第一歩になります。

3. 相続登記義務化とは何か、なぜ変わったのか

「相続登記義務化」とは、土地や建物を相続した人が、相続を知ってから一定期間内に登記をしなければならないという法律の改正です。2024年4月1日から施行され、相続したことを知った日から3年以内に登記しなければならなくなりました。
この変更がなぜ行われたかというと、「所有者不明土地」の問題が社会的に深刻になってきたからです。所有者の所在が分からない土地が多数あり、公共事業や災害対応、土地活用ができないケースが増えていました。法律を変えることで、土地の名義をきちんと記録し、将来の売買や公共利用をスムーズにしようという狙いがあります。
また、この義務化は過去に相続した未登記の土地にもさかのぼって適用されます。つまり、以前相続したけれどまだ登記をしていない農地も、このルールの対象です。漏れがないよう注意が必要です。

4. 相続登記義務化が売却にどう影響するか

この法改正が、相続した農地を売る場合にどう関わってくるかを考えてみましょう。
名義がきちんと登記されていないと、買いたい人がいても「この農地を売っていいか」が法律的に不確かなままになります。つまり、売買契約ができないか、契約後に問題になる可能性があります。
売る前に登記をする必要があるため、そのための手続き(戸籍を集める、相続人を確定するなど)が必要になります。これには時間がかかります。
義務化されたことで、役所や登記所も未登記の案件に対して指導・対応を強めていますので、「後でまとめてやればいい」と先送りすると、過料を請求される可能性もあります。
法改正以前の相続で未登記だった土地も対象になるため、「昔から名義が親のまま」という農地についても、売る前にまず登記をする必要があります。

5. 農地を売るときの選択肢:そのまま売るか、用途を変えて売るか

相続した農地を売るには、以下の2つの主な方法があります。

(1)農地のまま売る方法
農地をそのまま利用できる人(農業をする人)に売る。この場合、法律で「農業を続ける意思と能力」が認められていれば売却可能です。農地法という法律の中でのルールです。

(2)用途を変えて売る方法(農地転用)
「農地を住宅用地などに変えたい人」に売るには、農地を宅地に変える“農地転用”の手続きが必要です。市街化区域にある農地なら転用しやすいですが、調整区域だと許可できない場所も多いため、用途を変える場合は土地の場所や地域のルールをよく確認しましょう。

このどちらを選ぶかで、必要な手続きやかかる時間、売れる価格などに大きな差が出ます。

6. 売却までの流れと時間の目安

農地を売るまでには次のようなステップがあります

相続登記をする。
  ↓
農地の届出を農業委員会に提出する。
  ↓
売る相手を自分で探すか、不動産業者などに依頼する。
  ↓
必要なら農地転用の申請(用途を変える場合)をする。
  ↓
売買の契約を結ぶ。

これらを全部自分で進めると、書類を揃えたり役所とやりとりしたりするのに数か月〜1年近くかかることもあります。特に転用を伴う売却の場合は時間と費用もかさみます。“義務化”となったことで、登記や届出を先延ばしにできないという前提ができたため、売却を考えているならできるだけ早く準備を始めるのが得策です。

7. 専門家に頼むメリット

農地の売却や転用の手続きには、戸籍の取得、相続人の確認、土地の場所・用途の確認、農業委員会との調整、登記申請など、多くの作業が関わります。これらを一人でやろうとすると、戸籍がバラバラだったり相続人が多数だったりで手間が非常にかかります。

専門家である行政書士などに相談すれば、どの手順が必要か、どの書類が揃えばよいかを整理してもらえますし、登記義務化後のリスクや注意点も教えてもらえます。時間を節約でき、手続きのミスを避けられるので、結果的に安心して売却を進められるようになります。

8. まとめ

最近の法改正で「相続登記義務化」が始まったことで、相続した農地を売るためには、まず登記を忘れずに行うことが大前提になりました。名義変更が済んでいないと、どれだけいい相手がいても売れない可能性があります。
相続した農地をどう扱うかを考えている方は、早めに相続登記や届出の準備を始め、売却方法を選び、用途変更の可否を確認することが成功のポイントです。迷ったら、専門家に相談することで、後悔のない選択ができるようサポートいたします。

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