親子間でも農地貸借は許可が必要! ~正しい手続きでトラブルを防ぐ方法~

1.はじめに

「親子だから大丈夫」と思って農地をそのまま貸してしまうと、実は法律違反になってしまうことがあります。農地を子どもに貸す場合でも、農地法という法律に基づいて、正しい手続きが必要なのです。本記事では、無届けで貸したときに起きるトラブルや、安心して貸すために知っておくべき流れを解説します。

2.親子間でも手続きは必要なの?

「家族なんだから、役所に届けなくてもいいのでは?」と考える方は多いです。確かに日常生活の中で、親子間のやり取りにいちいち書類を作ったり役所に届けることはありません。しかし、農地の場合は特別です。農地を貸す行為は「農地法第3条」という法律で管理されており、相手が子どもであっても「農業委員会の許可」を受けなければならないのです。
なぜそこまで厳しく定められているかというと、農地は食料の安定供給を守る大切な資源だからです。誰が利用しているのかをきちんと公的に記録しておかないと、管理が曖昧になり、将来的に権利関係で混乱が生じます。つまり「親子だから例外」とはならず、手続きをしてはじめて正式に貸借関係が認められる仕組みになっているのです。

3.許可を得ずに貸した場合のリスク

もし「家族だし大丈夫」と思って無届けのまま農地を子どもに貸した場合、その契約は法律的には無効とされる可能性があります。さらに、農業委員会から「無断で農地を貸している状態を解消してください」と是正を求められることもあります。
この状態を長く続けてしまうと、後から相続が発生したときに「この農地を実際に管理しているのは誰か」が不明確になり、兄弟姉妹の間でトラブルになることが少なくありません。「あの土地は自分が借りていたのに」「そんな約束はなかった」といった争いは、親子間での口約束が原因で起きることが多いのです。無断で貸していたことが発覚すれば、農地の売却や転用の手続きも進められなくなり、結局は大きな手間をかけることになってしまいます。

4.正しい手続きを踏むことで得られる安心

一方で、農業委員会に申請をして正式に許可を得ておけば、こうした不安はすべて解消されます。貸主である親にとっては「法的に認められた形で子どもに貸している」という証明になり、借主である子どもにとっても「安心して農業を続けられる」という大きなメリットがあります。
さらに、将来相続の段階になったときも「この農地はすでに子どもが借りている」という事実が明確に残るため、相続人同士で揉めるリスクを大幅に減らせます。農地を貸すときに「手続きは面倒だから」と避けてしまう方もいますが、後々の安心を考えれば、正しい申請をしておくことこそが一番の近道なのです。

5.手続きの流れとポイント

農地を子どもに貸すときは、まず農業委員会に申請書を提出します。申請書には貸主・借主の氏名や住所、農地の所在地や面積、実際にどのように耕作するのかといった内容を記入します。その後、農業委員会が「子どもが農業を継続して行えるのか」を審査し、問題がなければ許可がおります。
注意点としては、農業委員会は月に1回しか開かれないことが多いため、提出から結果が出るまで時間がかかることです。急いで農業を始めたい場合でも、申請から数週間〜1か月ほど待たなければならないケースがあります。ですから「そろそろ子どもに貸そうかな」と考え始めた段階で、余裕を持って手続きを進めることが大切です。

6.将来の相続や売却にもつながる大事な準備

農地を子どもに貸すというのは、単に「今、農業を続けるため」だけでなく、将来の相続や土地の売却にも影響する重要な出来事です。きちんと許可を得ておけば、子どもがそのまま相続する際にもスムーズに手続きが進みますし、いずれ売却や転用を検討する際にも「正しい権利関係が残っている」ため手間が少なくなります。
逆に無断で貸したまま放置しておくと、いざ土地を処分しようとしたときに「誰の権利があるのか分からない」という状態になり、思い通りに活用できなくなってしまいます。親子間での貸し借りは一見シンプルに見えますが、実は将来を見据えたときに非常に大切な意味を持つのです。

7.まとめ

農地を子どもに貸すときには、親子であっても必ず農業委員会の許可が必要です。手続きをせずに貸すと、契約が無効になったり、将来の相続や売却でトラブルになるリスクがあります。一方で、正しく申請をして許可を受けておけば、安心して農地を活用でき、将来にわたってスムーズに引き継げます。大切な土地を安心して子どもに任せるためにも、「親子だから大丈夫」と思わず、必ず正しい手続きを踏むようにしましょう。

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Q1:農地を「親子間」で貸し借りする場合、特別な手続きは必要ない?

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