公開日:2025/10/07 / 更新日:2025/10/07
目 次
1. はじめに
「もう農業を続けるのが難しい」「相続した農地をどうすればいいのか分からない」──そんな悩みを抱える方は少なくありません。近年では、高齢化や後継者不足、生活拠点の移動などを背景に、農地を手放したいというご相談が増えています。
ただし、農地は宅地や山林と違って自由に売買できない点に注意が必要です。農地を農地のまま売るためには農地法による許可が前提で、売れる相手にも条件があります。知らずに契約を進めると契約が無効になり、登記できないなどのトラブルに直結します。
本記事では、農地を手放したい方に向けて、「農地のまま売れる相手」と「売れない相手」の違い、手続きの流れや注意点を、初めての方にも分かりやすい言葉で解説します。
2. 農地を売るには「農地法第3条の許可」が必要
農地法第3条は、農地の売買・貸借・名義変更などを行う際に、農業委員会の許可を求める規定です。目的は、耕作できる人に農地を集約し、農地の保全と食料の安定供給を守ることにあります。
許可の可否は、買主の農業経験や作業能力、所有・耕作面積(R5.4廃止)、今後の経営計画などを総合的に見て判断されます。結論:農地を農地のまま売る=「農業を続けられる人」への売却に限られる、という大原則です。
3. 農地のまま売れる相手:基本は「農業をしている人」
農地を農地のまま購入できるのは、既に農業を営んでいる方、あるいは新たに農業を始め継続する意思・能力がある方に限られます。具体的には、近隣の担い手が隣接地をまとめたいケースや、新規就農者が経営規模を確保するために取得するケースなどが代表例です。
許可が下りやすいポイント
自ら農作業を行える体制(家族・雇用含む)が整い、機械・施設・資金計画などの準備があり、継続的かつ効率的な耕作見込みが示されているかが重要です。これらを根拠ある計画として申請に落とし込むことが許可への近道になります。
4. 売れない相手とは?非農家への売却は原則NG
「家庭菜園をしたい」「資産として持っておきたい」といった非農家の方への売却は、原則として認められません。理由は、耕作が行われないことで耕作放棄地が増え、地域の農業基盤が損なわれる可能性があるためです。
非農家にどうしても土地を渡したい場合は、農地転用(農地法5条許可)で宅地や駐車場等に用途変更したうえで売却する流れを検討します。なお、市街化区域では届出で足りる場合がある一方、市街化調整区域では転用が原則困難など、区域区分によるハードルの差にも注意が必要です。
5. 親族間の譲渡でも気を抜かない
「相続だから手続き不要」「兄弟に渡すだけだから簡単」──実はここが盲点です。親族間の譲渡・贈与であっても、農地のまま引き渡す場合は3条許可(届出)が必要です。農業をしていない親族に名義を移す計画では、許可が下りないことも十分あり得ます。
共有や分筆の注意点
相続で共有になった農地を分ける場合、分筆登記や面積条件の確認が必要です。測量や境界確定に時間と費用がかかるため、スケジュールに余裕を持ち、調査・行政手続き・登記を横断的に設計することが大切です。
6. 無許可で売買するとどうなる?契約は「無効」?
農地法の許可を得ずに売買した場合、契約は無効です。たとえ売買契約書を交わし代金の授受があっても、登記はできず所有権は移転しません。さらに、悪質と判断されれば是正命令・原状回復などの行政措置の対象となることもあります。
無許可リスクを避けるには、売買契約の前に農業委員会へ相談し、申請〜許可〜決済の順序を守ることが鉄則です。
7. 農地を安全に手放すための選択肢
「使わないから手放したい」という場合でも、いきなり売却だけが正解ではありません。地域や立地に応じ、次のような選択肢を比較検討しましょう。
主なルート
① 農地のまま農家へ売る(3条許可)… 近隣担い手への集積は許可が得られやすい代表例。
② 農地を貸す… 農地中間管理機構の活用や、適正な契約で管理負担を軽減。
③ 転用してから売る(5条許可)… 需要や区域次第では相応価格での売却も。
④ 相続・管理の見直し… 相続放棄、管理人選任、国庫帰属制度の検討など。
どの道を選ぶにせよ、農地法・登記・税務が絡みます。独断で走らず、行政書士等の専門家に早めに相談することで、ムダを減らし、後戻りのない計画に整えられます。
まずは無料相談で最短ルートを確認しましょう
「うちの農地は農地のまま売れる?」「転用が現実的?」 状況にあわせて最適な手順をご提案します。必要書類(登記事項・公図・固定資産税通知など)があれば拝見します。無料相談の予約はこちら
8. まとめ
結論:農地を農地のまま売れるのは「実際に農業を行う(行える)相手」×「農地法3条許可」の組み合わせを満たす場合に限られます。非農家への売却は原則不可で、必要に応じて転用(5条)を検討します。相続・親族間の譲渡でも許可が要る点に注意し、無許可の売買は無効であることを忘れないでください。
「手放したい」と思ったら、区域・需要・手続きを総合的に見て、農業委員会や専門家と二人三脚で進めるのが、最も安全で後悔のない方法です。
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