遺言書との違いは?エンディングノートの役割と上手な書き方を行政書士が解説

「エンディングノートって聞いたことはあるけれど、何を書けばいいのかわからない」という方は多いものです。 私も行政書士として多くの方とお話ししてきましたが、実際に手を動かせない一番の理由は、「どこまで書けばいいのか」「遺言書と何が違うのか」が分からないからです。 この記事では、エンディングノートの目的や遺言書との違い、そして今日から書き始めるためのポイントを、やさしくお伝えしていきます。

1. エンディングノートと遺言書の違いを知ろう

まず最初に整理しておきたいのが、エンディングノートと遺言書の違いです。 遺言書は「法的な力」を持つ書類で、財産の分け方や相続人の指定など、法律上の効力を伴う大切な書面です。これに対して、エンディングノートは自分の気持ちや希望、生活情報を家族に伝えるための記録。つまり、法的効力はありませんが、家族の手助けになる“道しるべ”のような存在です。

たとえば「どんな葬儀にしてほしい」「延命治療はどう考えているか」「デジタルデータはどう扱ってほしいか」など、遺言書には書けない“心の部分”を残すことができます。 それがエンディングノートなのです。

2. エンディングノートを書く目的

「自分の死後のため」と思われがちですが、実はエンディングノートは今を安心して生きるためのツールでもあります。 たとえば、突然の病気や入院で意思を伝えられなくなったとき。自分の希望を家族が知っていれば、迷うことなく判断できます。 延命治療を望むのか、どのような介護を受けたいのか、葬儀やお墓のことまで。あらかじめ想いを言葉にしておくことで、家族が「これで良かったのだろうか」と悩む時間を減らせます。

また、もう一つの目的は情報の整理です。 預金通帳や保険証券、年金関係の書類など、生活の中には意外と多くの「自分しか知らない情報」があります。 さらに最近は、ネット銀行やスマホ決済、SNSなどのデジタル遺産も見逃せません。これらを一覧化しておくことで、残された家族が混乱せずに対応できます。

3. 何から書けばいい?最初の一歩

「エンディングノートを買ったけれど、真っ白なままで…」という方も少なくありません。 そんな方におすすめしているのが、最初から全部を書こうとしないことです。 まずは「緊急時に役立つこと」から始めてみましょう。たとえば、自分の連絡先、家族や友人、かかりつけ医、保険会社などの情報をまとめておく。それだけでも十分な意味があります。

次に、気持ちが乗ってきたら「これからどう生きたいか」について少しずつ書き足していくのがおすすめです。 「旅行をしたい」「庭の手入れを続けたい」「孫の成長を見守りたい」──そんな前向きな願いを書きながら、自然と“人生の棚卸し”が進んでいきます。

4. 書き方のコツと続ける工夫

エンディングノートは、完璧に仕上げるものではありません。 書いているうちに気持ちが変わっても構わないのです。 大切なのは「いまの自分の考えを残すこと」。 そして、年に一度くらい、誕生日などの節目に見直す習慣をつけましょう。 変化を追記することで、自分の心の変化を感じられるようになります。

書き方に迷ったら、「誰に何を伝えたいか」を意識してみてください。 家族へのメッセージ、友人への感謝、ペットの世話のお願いなど、日常の延長にある内容で十分です。

5. 保管と共有の仕方

せっかく書いたエンディングノートも、誰にも見つけてもらえなければ意味がありません。 金庫や書斎の引き出しなど、安全で家族が思い出しやすい場所に保管しておきましょう。 そして、信頼できる人に「この場所に置いてある」とだけ伝えておくと安心です。 内容そのものをすべて見せる必要はありません。見つけてもらえる仕組みを作ることが大切です。

最近では、スマートフォンやパソコンのデータを整理して記録する「デジタルエンディングノート」も増えています。 ただし、IDやパスワードをそのまま書き残すのはリスクがあります。 「どこに保管しているか」「どうやって開けるか」など、方法だけを示すようにしましょう。

6. 遺言書とエンディングノート、どちらが大事?

どちらか一方ではなく、両方を活用するのが理想的です。 遺言書は法律的な部分をきちんと整理し、エンディングノートは感情や希望を家族に伝えるための補助的な存在です。 この2つをセットで準備しておくことで、「法律の整理」と「心の整理」の両方が叶います。

実際にご相談を受けると、「エンディングノートを書いていたおかげで、遺言書の内容がスムーズに決まった」という方も多いです。 想いを整理してから書く遺言書は、迷いが少なく、より自分らしいものになります。

7. まとめ:エンディングノートは“未来への手紙”

エンディングノートは、決して“死に向かう準備”ではありません。 むしろ、今を大切に生きるためのノートです。 家族に想いを残すことは、あなた自身の安心にもつながります。 完璧を目指さず、まずは1ページだけでも。 書き始めたその瞬間から、エンディングノートは“あなたらしい人生の記録”になります。

行政書士として、私たちはそのお手伝いをしています。 遺言書の作成やエンディングノートの内容整理、デジタル資産の管理方法など、専門的な部分も一緒に考えていきましょう。 「将来のために、今の自分を整える」──それが、安心して暮らすための第一歩です。

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