遺言書で「全財産を愛人に相続させる」と書かれていたら、家族は財産をもらえないのか?

亡くなった親の遺品から一通の遺言書──「全財産を愛人に相続させる」
ドラマの中だけの話に思えますが、現場では珍しくありません。では、家族は本当に一円も受け取れないのでしょうか。
今回は、遺言の効力家族に残された遺留分請求の期限無効になる可能性実務の手順まで、法律のルールをやさしく解説します。

更新日:2025年10月29日目次

    1. まず結論:家族が「ゼロ」になるとは限らない

    遺言に「全財産を愛人に」と書かれていても、配偶者や子には『遺留分(いりゅうぶん)』という最低限の取り分が認められています。
    したがって、家族が何も受け取れないことは、ありません。一方で、兄弟姉妹には遺留分がありません(のちほど説明)。

    2. 遺言の原則:本人の意思は強いが「限界」もある

    民法は、人は自分の財産を遺言で自由に処分できると定めています。従って、愛人・友人・団体など、家族以外に財産を遺すことも可能です。
    ただし、家族の生活の基盤を守るものとして遺留分が用意されており、遺言の自由はその範囲で制限されます。

    3. 家族の最低保証「遺留分」とは

    遺留分は、法定相続人が必ず確保できる最低限の割合です。遺言で極端な偏りがあっても、この範囲は取り戻せます。

    相続人の構成遺留分の合計備考
    配偶者+子遺産全体の1/2(を配偶者と子で分け合う)例:子1人なら配偶者1/4・子1/4が目安
    子のみ遺産全体の1/2(子の人数で按分)子2人なら各1/4
    配偶者のみ遺産全体の1/2直系尊属・兄弟がいなくても同じ
    直系尊属(親)のみ遺産全体の1/3子も配偶者もいないケース
    兄弟姉妹のみ遺留分なし遺言どおりになりやすい

    ※遺留分は金銭請求で取り戻すのが原則です。

    4. いくら取り戻せる?遺留分侵害額請求の具体例

    例1:遺産2,000万円/子1人のみ(遺言:全て愛人に)

    子の遺留分=全体の1/2=1,000万円。愛人に対し1,000万円の金銭請求が可能。

    例2:不動産が中心(自宅3,000万円)で現金が少ない場合

    愛人が不動産を相続しても、家族は金銭で遺留分を請求できます。支払資金が不足する場合、売却・借入・分割払いの和解等で調整することになります。

    5. 請求の期限(時効・除斥期間)と証拠集め

    • 知った時から1年:愛人が受け取ったこと・侵害額を知った日から1年で時効。
    • 相続開始から10年:これを超えると請求できない

    迷ったらすぐ専門家へ。内容証明・計算書・財産目録・評価資料などを整え、交渉・調停に備えます。

    6. 「愛人に全部」の遺言が無効・無力化される可能性がある場面

    • 方式の不備:自筆なのに全文自書でない、日付・署名・押印なし等。
    • 遺言能力の欠如:重度の認知症等で意思能力がない状態。
    • 強要・詐欺:誰かに無理やり書かされた、だまされた。
    • 公序良俗違反等:極端な条件付けなど。

    なお、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用した場合は、家庭裁判所の検認が不要になります。

    7. 実務の流れ:家族が取るべき行動チェックリスト

    1. 遺言の保全:自筆は勝手に開封せず家庭裁判所へ「検認」申立て
    2. 相続人調査:戸籍を出生から死亡まで収集し、配偶者・子・親・兄弟等を確定。
    3. 財産調査:不動産(固定資産税・登記事項)、預貯金、有価証券、保険、借金も含め把握。
    4. 遺留分の試算:相続開始時点の評価で計算。生前贈与があれば加算対象の有無も検討。
    5. まとまらない場合:家庭裁判所の調停・審判等を検討。

    8. 予防と備え:争いを避ける遺言・生前対策

    (1)遺言の質を上げる

    • 公正証書遺言の活用:方式不備のリスク低減、原本保管で安心。
    • 付言事項で背景・配慮を丁寧に記載:家族の納得感を高める。
    • 遺留分配慮を前提に設計:のちの請求を織り込んだ金銭準備や保険活用。

    (2)家族への事前説明

    • 遺言の存在と保管場所、意図を生前に共有しておくと、対立の火種が小さくなります。

    ※本記事は一般的な解説です。個別事情により結論が変わる場合があります。お気軽にご相談ください。

    💡理解度チェッククイズ

    この記事のポイントを3問で総復習。各問の「答えを見る」をタップ!

    Q1.配偶者と子がいるのに、遺言で「全財産を愛人に」と書かれていた場合、家族が行使できる代表的な権利はどれ?

    1. 特別受益の持戻し請求
    2. 遺留分侵害額請求
    3. 代償分割請求
    ▶ 答えを見る

    正解はB:遺留分侵害額請求。配偶者・子などの遺留分権利者は、遺言で偏った処分があっても金銭で取り戻しを請求できます。

    Q2.相続人が「配偶者+子2人」のとき、遺留分の合計は遺産全体のどれ?

    1. 1/3
    2. 1/2
    3. 3/4
    ▶ 答えを見る

    正解はB:1/2。配偶者と子がいる場合、遺留分の合計は遺産の2分の1。その範囲内で配偶者と子が按分します。

    Q3.遺留分侵害額請求の期限として正しいのはどれ?(消滅)

    1. 相続開始から10年、または侵害を知った時から1年(早い方)
    2. 遺言書の開封から2年
    3. 相続開始から5年
    ▶ 答えを見る

    正解はA「知った時から1年」「相続開始から10年」のいずれか早い方で権利が消滅します(時効・除斥期間)。

    ✅ 少しでも迷ったら、早めの確認が安心に直結します。
    行政書士へのご相談もご検討ください。
    遺言の有効性チェック、遺留分の試算、内容証明の作成まで並走支援します。

    【事務所概要】
    行政書士やまだ法務事務所
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