父と母が立て続けに亡くなった時の手続き:「数次相続(すうじそうぞく)」の現実と対処法

ご家族を亡くされる悲しみは、言葉に尽くせません。ましてや、お父様が亡くなり、その悲しみも癒えないうちにお母様も後を追うように亡くなられてしまった場合、ご遺族の精神的な負担は計り知れないものがあります。

行政書士として日々ご相談を伺う中で、このような「ご両親が立て続けに亡くなる」というケースに直面される方は決して珍しくありません。しかし、悲しみに暮れる間もなく、ご遺族には複雑な相続手続きが重くのしかかってきます。

今回は、一度の相続手続きが終わる前に次の相続が発生してしまう「数次相続(すうじそうぞく)」について、なぜ手続きが難航しやすいのか、そしてどのように進めていけば良いのかを、行政書士の目線で分かりやすく解説いたします。

1. 「数次相続」とは何か?

数次相続とは、ある人が亡くなって相続が開始した後、その遺産分割手続きや名義変更が終わらないうちに、相続人の一人が亡くなってしまい、さらに次の相続が開始してしまうことを指します。

例えば、「父が亡くなり、母と子どもたちで遺産分割の話し合いをしようとしていた矢先に、母も亡くなってしまった」というケースがこれに当たります。
1回目の相続(父の相続)が完了していない状態で、2回目の相続(母の相続)が発生するため、2つの相続手続きが重なり合って進行することになります。これが、手続きを非常に複雑にする最大の要因です。

2. なぜ数次相続は「恐怖」と呼ばれるほど大変なのか

実務上、数次相続が発生するとご遺族が「どうしていいか分からない」とパニックに陥ってしまうことがよくあります。その理由は主に以下の3点にあります。

  • 関係する相続人が一気に増える・複雑になる
    通常の相続であれば「母と子どもたち」で話し合うはずが、母が亡くなったことで、母の相続人(子どもたち)が母の立場を引き継ぎます。もし子どもたちの中に亡くなっている方がいれば、さらにその配偶者や孫へと権利が広がり、会ったこともない親戚を巻き込んだ話し合いになることもあります。
  • 集めるべき戸籍謄本の量が膨大になる
    相続手続きには「誰が相続人であるか」を証明するための戸籍謄本が必須です。数次相続では、お父様の出生から死亡までの戸籍に加え、お母様の戸籍も集めなければならず、役所を何度も行き来する手間が通常の倍以上かかります。
  • 「どちらの財産か」が曖昧になりやすい
    お父様名義の預金がお母様の生活費として使われていたなど、財産の境界線が曖昧になっていると、後から遺産分割を行う際にトラブルの原因になりやすいのです。

3. 手続きは「1回にまとめて」できるのか?

「父と母の財産なんだから、子どもたちでまとめて1回で手続きできないの?」とよくご質問をいただきます。

結論から申し上げますと、手続きの進行上、ある程度まとめることは可能ですが、法的な意味合いとしては「父の相続」と「母の相続」は明確に分けて考えなければなりません。

例えば、遺産分割協議書を作成する場合、「父の遺産を誰が相続するか」という話し合い(母は死亡しているため、母の相続人として子どもたちが話し合う)と、「母の遺産を誰が相続するか」という話し合いは別物です。
実務上は、1つの遺産分割協議書にまとめることも(要件を満たせば)可能ですが、書き方には「〇〇は亡母△△の相続人として~」といった特殊な文言が必要になり、ご自身で作成するには少しハードルが高いかもしれません。

4. 手続きを進める正しい順番

数次相続が起きた場合、焦らずに以下の順番で手続きを整理していくことが大切です。

  1. 相続人の確定(戸籍の収集)
    まずは、父の相続人は誰だったのか、そして母の相続人は誰なのかを、戸籍をさかのぼって正確に把握します。
  2. 相続財産の調査
    父の名義のままになっている財産(不動産、預貯金など)と、母名義の財産をそれぞれリストアップします。
  3. 遺産分割協議の実施
    基本的には、古い相続(父の相続)から順番に話し合いをまとめるのが分かりやすい進め方です。父の遺産を一旦どう分けるかを確定させ、その結果を踏まえて母の遺産について話し合います。
  4. 名義変更(相続登記・口座解約など)
    協議がまとまったら、法務局や金融機関で手続きを行います。不動産の場合、現在は一定の条件下で中間の登記(母への名義変更)を省略し、最終的な相続人(子ども)へ直接名義変更できる特例もあります。

5. 相続税の申告には特別な配慮が必要

もしご両親の遺産が相続税の基礎控除額を超える場合、税務上の手続きも急ぐ必要があります。
相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」です。父の相続税申告の期限が迫っている中で母が亡くなった場合、母の相続人(子どもたち)が代わりに申告を行う義務を負います(申告期限の延長特例もあります)。

また、「相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)」といって、10年以内に立て続けに相続が起きた場合、2回目の相続税負担を軽減できる制度があります。こうした制度を漏れなく活用するためにも、早めに全体像を把握することが重要です。

6. 放置は厳禁!さらに次の代へツケを回さないために

悲しみと疲労から、「とりあえず実家の名義は父のままにしておこう」「使わない口座だから放っておこう」と、手続きを後回しにしてしまう方がいらっしゃいます。

しかし、数次相続を放置したまま、さらに数年後に子ども世代の誰かが亡くなってしまうと、今度は「孫」や「甥・姪」の世代まで相続人が拡大してしまいます。これを「再転相続」などと呼びますが、こうなると話し合いをまとめることは極めて困難になり、不動産が「空き家」として放置される原因にもなります。
大変な時期ではありますが、ご自身の代でしっかりと権利関係を整理しておくことが、次の世代への一番の贈り物になります。

7. 専門家を頼るべきタイミング

次のような状況に当てはまる場合は、お早めに私たちのような行政書士や、関連する専門家(司法書士、税理士など)にご相談されることをお勧めします。

  • 平日、役所や銀行に行く時間を全く取れない
  • 戸籍謄本をどう集めていいか見当もつかない
  • 遺産分割協議書の書き方が分からず、後々のトラブルが不安
  • 疎遠になっている親族がいて、話し合いが難航しそう

私たち行政書士は、煩雑な戸籍収集から、ご家族の想いを反映した遺産分割協議書の作成まで、皆様の負担を少しでも軽くするためのサポートを行っております。

8. おわりに:悲しみの中で無理をしないために

ご両親を相次いで見送られた喪失感の中で、見慣れない法律用語や役所の手続きと向き合うのは、本当に骨の折れる作業です。

「しっかりしなければ」とご自身だけで抱え込む必要はありません。専門家は、単なる書類作成の代行者ではなく、ご遺族が少しでも平穏な日常を取り戻すための伴走者でもあります。
数次相続という複雑な状況に直面された際は、どうぞお一人で悩まず、身近な専門家に声をかけてみてください。

※本記事の内容は、執筆時点の法令・情報に基づき一般的な解説を提供するものであり、特定の事案についての助言・判断を目的としたものではありません。実際の手続きや対応方法は、状況・地域・関係機関・契約内容等によって大きく異なります。そのため、本記事のみを根拠として判断・行動されることはお控えいただき、個別の事情に応じた専門家への相談をおすすめいたします。本記事の内容に基づき生じたトラブル・損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

📝 「数次相続」の法律クイズ 📝

父が亡くなり、その遺産分割が終わらないうちに母も亡くなってしまった。このように複数の相続が重なる状態を何と呼ぶでしょうか?

✅ クイズクリア!お疲れ様でした!

数次相続は、通常の相続よりも格段に手続きの難易度が上がります。
大切なご家族を立て続けに亡くされた悲しみの中で、複雑な戸籍収集や協議書の作成をご自身で行うのは大変な負担です。次の世代へ問題を先送りしないためにも、専門家へお任せください。

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