こんにちは、行政書士の山田です。
本日のテーマは、近年増えている「ステップファミリー(再婚家庭)」の相続についてです。
「再婚して、新しいパートナーの連れ子と一緒に暮らしている。実の子のように可愛いけれど、法律上の親子ではない。私が死んだら、この子はどうなるんだろう?」
そんな不安を抱えている方が、実はとても多いのです。
今日は、専門家として、そして一人の生活者の視点から、再婚家庭における「財産の残し方」について、少し踏み込んでお話ししたいと思います。
あなたとあなたの大切な家族を守るために、ぜひ最後までお付き合いください。
【本記事の内容】
- 衝撃の事実:「一緒に暮らしている」だけでは、1円も相続できない
- 二つの大きな選択肢:「養子縁組」か「遺言書」か
- 【選択肢A】養子縁組:法的に「本当の親子」になる覚悟
- 【選択肢B】遺言書:「特定遺贈」で想いを託す
- 行政書士の視点:どちらを選ぶべきか?判断のポイント
- 忘れてはいけない「遺留分」と「付言事項」の魔法
- まずは「家族会議」の前に専門家へ
1. 衝撃の事実:「一緒に暮らしている」だけでは、1円も相続できない
まず、心を鬼にして厳しい現実をお伝えしなければなりません。
どれだけ長い時間を共に過ごし、どれだけ「お父さん」「お母さん」と呼び合っていても、法的な親子関係(血縁または養子縁組)がなければ、連れ子に相続権は一切ありません。
例えば、あなたが再婚相手(妻)と、妻の連れ子(Aくん)と3人で20年間幸せに暮らしたとします。
もしあなたが亡くなった場合、あなたの財産は「妻」には行きますが、「Aくん」には1円も行きません。
「でも、妻が相続するんだから、最終的にはAくんに行き渡るでしょう?」
そう思われるかもしれません。確かに、順当にいけばそうです。しかし、相続の世界には「まさか」という落とし穴があります。
もし、あなたより先に、あるいはあなたと同時に、奥様が亡くなってしまったらどうなるでしょうか?
あなたの財産は、法律上の相続人である「あなたの親」や「あなたの兄弟姉妹」、あるいは「あなたの前妻との間の子供」に渡ります。
そこには、Aくんの入る隙間はまったくないのです。
一緒に暮らした家も、預金も、すべて遠い親戚や疎遠な実子に渡り、残されたAくんが家を追い出される……。
だからこそ、今、対策が必要なのです。
2. 二つの大きな選択肢:「養子縁組」か「遺言書」か
連れ子であるお子さんに財産を残す方法は、大きく分けて2つあります。
「養子縁組」をするか、「遺言書」を書くか、です。
どちらが良い悪いではなく、それぞれに「意味」と「覚悟」の種類が違います。それぞれの特徴を見ていきましょう。
3. 【選択肢A】養子縁組:法的に「本当の親子」になる覚悟
最も強力な方法は、養子縁組です。
役所に届出をすることで、法律上の親子関係を創設します。
養子縁組のメリット
- 当然に相続人になる
実子と全く同じ立場で相続権が発生します。 - 相続税の節税
法定相続人の数が増えるため、基礎控除額が増え、税金面で有利になることが多いです。 - 精神的な絆
何より、「本当の親子になった」という精神的な充足感は計り知れません。
デメリット・注意点
- 簡単に解消できない
一度縁組をすると、関係が悪化したからといって簡単に解消(離縁)することは難しいです。 - 扶養義務が発生する
親子になるということは、将来の介護や扶養の義務も発生することを意味します。 - 苗字の問題
お子さんの苗字が変わる場合、学校生活などへの配慮が必要になることもあります。
養子縁組は、単なる財産対策ではなく「一生親子としてやっていく」という強い契約です。お子さんが未成年の場合と成人の場合でも手続きの重みが変わりますので、慎重な検討が必要です。
4. 【選択肢B】遺言書:「特定遺贈」で想いを託す
「養子縁組までは少しハードルが高い」「子供が成人していて、今の距離感がちょうどいい」
そんな場合に有効なのが、遺言書による「遺贈(いぞう)」です。
遺言書の中で、「私の財産の〇〇を、妻の連れ子である△△に遺贈する」と書き残す方法です。
遺言書のメリット
- 親子関係を変えずに財産を渡せる
戸籍上の身分関係を動かさずに済みます。 - 財産の指定ができる
「自宅はこの子に」「現金は妻に」など、柔軟な指定が可能です。 - 心理的負担が少ない
お子さんにとっても、実の親(別れた父や母)への気兼ねなく受け取れる場合があります。
デメリット・注意点
- 遺言書がないと無効
口約束やエンディングノートでは法的な効力がありません。必ず形式要件を満たした遺言書が必要です。 - 相続税が2割加算
実子や配偶者以外への遺贈は、相続税が2割増しになるというルールがあります。 - 全財産は渡せないかも
他の相続人(前妻の子など)の「遺留分」を侵害すると、後でトラブルになる可能性があります。
5. 行政書士の視点:どちらを選ぶべきか?判断のポイント
では、どちらを選べばいいのでしょうか?
一概には言えませんが、私は下記の通りをおすすめします。
養子縁組をおすすめするケース
- お子さんがまだ小さく、これから長い時間を親子として育てる場合。
- 相続税対策も兼ねて、基礎控除枠を増やしたい場合。
- 「家名」や「事業」を継いでほしいという明確な意思がある場合。
遺言書(遺贈)をおすすめするケース
- お子さんが既に成人・独立しており、対等な大人同士の関係である場合。
- 実の親(元夫・元妻)との関係性が深く、戸籍を動かすことに抵抗がある場合。
- 前妻(前夫)との間に実子がおり、あからさまな養子縁組が角を立てそうな場合。
もちろん、「養子縁組をした上で、さらに遺言書も書く」のが最強の対策であることは間違いありません。養子縁組をして相続人になっても、遺産分割協議で揉める可能性は残るからです。
6. 忘れてはいけない「遺留分」と「付言事項」の魔法
再婚家庭の相続で最も頭を悩ませるのが、「前婚の子供(実子)」との関係です。
あなたに、前のパートナーとの間にお子さんがいる場合、その子には強い相続権と、最低限の取り分である「遺留分(いりゅうぶん)」があります。
新しい家族(連れ子)に財産を全部あげたいからといって、前婚の子供の権利を完全に無視した遺言を書くと、あなたの死後、「遺留分侵害額請求」という争いに発展するかもしれません。これでは、愛する今の家族を苦しめることになりかねません。
そこで大切になるのが、バランス感覚と「付言事項(ふげんじこう)」です。
付言事項とは、遺言書の最後に添える「家族への手紙」のようなものです。法的な拘束力はありませんが、なぜこのような分け方にしたのか、あなたの「想い」を記すことができます。
「前の家族との子供たちのことも大切に思っている。ただ、今の妻と連れ子は、私の晩年を支えてくれた。だから自宅はこの子たちに残したい。どうか父の最後の願いとして、争わないでほしい」
無機質な法律文書に、あなたの「肉声」を乗せる。
これがあるだけで、残された人たちの感情のもつれが解け、争いが回避される可能性がグッと高まります。
7. まずは「家族会議」の前に専門家へ
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
「よし、帰ったら妻(夫)と話し合ってみよう」と思われたかもしれません。
しかし、少しだけ待ってください。
いきなり家族会議を開くと、「お金の話」は生々しくなりがちで、かえって感情的なしこりを生むことがあります。
また、ネット上の知識だけで養子縁組や自筆証書遺言を作成し、形式不備で無効になってしまうケースも後を絶ちません。
まずは、頭の中のモヤモヤを整理するために、私たち専門家を使ってみてください。
あなたの家庭の状況(再婚の時期、連れ子の年齢、前婚の子の有無、財産の種類)によって、ベストな「設計図」は全く異なります。
- 養子縁組をすべきか、遺言だけでいくべきか。
- 遺留分をどうケアするか。
- 公正証書遺言を作る際の手順は。
これらを整理し、客観的な視点でお伝えすることで、ご家族への説明もスムーズになります。
まとめ
再婚家庭(ステップファミリー)の絆は、血のつながりがない分、日々の積み重ねで作られた強くて優しいものです。
その大切な絆を、相続という「手続き」の不備で壊してほしくない。それが私の願いです。
「まだ元気だから大丈夫」ではなく、「元気な今だからこそ、愛する家族のためにできるプレゼント」として、相続対策を考えてみませんか?
当事務所では、再婚家庭特有の複雑な事情にも、守秘義務のもと親身になって対応いたします。
誰にも言えない悩み、まずは私に吐き出してみてください。一緒に、一番優しい解決策を見つけましょう。
📝 再婚家庭の相続チェック 📝
【第1問】再婚相手の連れ子と20年間一緒に暮らし、「お父さん」と呼ばれて実の子のように過ごしてきました。しかし、養子縁組はしていません。あなたが亡くなった際、連れ子に相続権はあるでしょうか?
【事務所概要】
行政書士やまだ法務事務所
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