交通事故に遭い、相手方の自賠責保険に「被害者請求」を行ったものの、「思っていたより慰謝料が少ない」「減額されている」と戸惑われる方は少なくありません。
交通事故の被害者になってしまっただけでも辛いのに、手元に入る金額が予想より少なければ、不安や不満が募るのは当然のことです。
この記事では、日々交通事故被害者の方からのご相談をお受けしている行政書士の視点から、自賠責保険で慰謝料が減額される理由と、「2割の減額」が手元の慰謝料にどれほど大きな影響を与えるのか、その仕組みを分かりやすく解説いたします。
1. なぜ自賠責保険の慰謝料は減額されるのか?
自賠責保険は、交通事故の被害者を救済するための最低限の補償を目的とした国の保険制度です。そのため、被害者に有利な仕組みになっていますが、一定の条件下では支払い額が減額される「重過失減額」というルールが存在します。
一般的な示談交渉では、過失割合が「7対3」であれば、被害者側の損害額も3割減額(過失相殺)されます。しかし、自賠責保険の被害者請求においては、被害者の過失が7割未満であれば、原則として減額されることはありません。
自賠責保険で減額されるのは、被害者側の過失が7割以上(重過失)と判断された場合のみです。ケガ(傷害)の場合、具体的には以下のように減額割合が定められています。
- 被害者の過失割合が7割以上 10割未満の場合: 損害額の2割を減額
- 被害者の過失割合が10割(100%)の場合: 自賠責保険からの支払いはなし
つまり、「減額された」という通知が来た場合、事故状況の調査結果により、ご自身の過失割合が7割以上と認定されてしまった可能性が高いということです。
2. 自賠責保険の慰謝料計算の基本をおさらい
減額の影響を理解するために、まずは減額される前の基本的な慰謝料の計算方法(自賠責基準)をおさらいしておきましょう。
傷害に対する慰謝料は、1日あたり「4,300円」(※令和2年4月1日以降発生の事故)で計算されます。
計算式は、以下の2つのうち、日数が少ない方を採用して掛け合わせます。
- 治療期間(初診日から治療終了日までの総日数)
- 実通院日数(実際に病院に通った日数)× 2
例えば、治療期間が90日、実通院日数が30日の場合。
1は90日、2は「30日×2=60日」となります。少ない方の60日を採用し、「4,300円 × 60日 = 258,000円」が基本の慰謝料となります。
3. 【要注意】2割減額の落とし穴!慰謝料はさらに大きく減る?
ここからが、被害者の方が最も戸惑うポイントです。
「損害額の2割が減額されるなら、慰謝料も2割減るだけだろう」と考える方が多いのですが、実はそうではありません。手元に残る慰謝料は、2割以上に大きく減少してしまうケースがほとんどなのです。
なぜなら、重過失による2割減額は「慰謝料単体」ではなく、「治療費などを含めた総損害額」に対して適用されるからです。
病院での治療費は、すでに発生してしまっている(または病院に支払うべき)確定した実費です。自賠責保険から支払われる総額が2割減らされたとしても、治療費を値切ることはできません。
その結果、減額された総額の中から、まずは絶対に支払わなければならない「治療費」が優先して差し引かれます。そして、残った金額だけが「慰謝料」として被害者の手元に支払われる(つまり、慰謝料が治療費の補填に回されてしまう)という仕組みになっているのです。
4. 【具体例】手元に残る慰謝料のシミュレーション
言葉だけでは分かりにくいので、具体的な数字を使ってシミュレーションしてみましょう。(※説明をシンプルにするため、休業損害や交通費などは除外して計算します)
【前提条件】
- 治療費(実費):600,000円
- 慰謝料(計算上):400,000円
- 総損害額:1,000,000円
パターンA:過失が7割未満で、減額されない場合
総損害額1,000,000円がそのまま認められます。
治療費の600,000円は病院へ支払われ、被害者の手元には慰謝料として400,000円が全額支払われます。
パターンB:過失が7割以上で、2割(重過失)減額された場合
まず、総損害額1,000,000円から2割が減額されます。
- 1,000,000円 × 0.8 = 800,000円(自賠責からの総支払額)
この800,000円の中から、確定している治療費600,000円が優先的に支払われます(または相殺されます)。
- 800,000円(総支払額) - 600,000円(治療費) = 200,000円(手元に残る慰謝料)
いかがでしょうか。
全体の減額割合は「2割(20%)」であるにもかかわらず、手元に残る慰謝料は400,000円から200,000円へ、実質的に「半減(50%減)」してしまいました。
これが、被害者請求で減額通知が来た際に「思っていたより全然少ない!」と驚かれる最大の理由です。
5. 減額の理由に納得がいかない場合の手段
このように、たった「2割」の減額であっても、被害者の方が受け取る精神的な補償(慰謝料)へのダメージは甚大です。
もし、自賠責保険から届いた通知の「過失割合が7割以上」という判断にどうしても納得がいかない場合、被害者には「異議申立て」という手段が残されています。
これは、警察の実況見分調書を取り寄せたり、新たな客観的証拠を集めたりして、「自分の過失は7割未満である」と主張し、自賠責保険に対して再審査を求める手続きです。一度出た認定を覆すのは決して簡単ではありませんが、結果に疑問がある場合は、泣き寝入りする前に検討すべき制度として知っておいて損はありません。
6. 行政書士が被害者請求でサポートできること
私たち行政書士は、法律により相手方との直接的な示談交渉や、法的な争いが生じている事案の代理を行うことはできません。しかし、自賠責保険への「最初の被害者請求」の段階において、書面作成の専門家として皆様をサポートすることが可能です。
- 煩雑な書類の収集・作成: 診断書、診療報酬明細書など、被害者請求に必要な膨大な書類を被害者の方に代わって、あるいはサポートしながら漏れなく収集・作成し、お手続きの負担を軽減します。
- 事実関係の整理: 事故の状況や損害の内容を正しく書面に落とし込み、スムーズに自賠責保険へ請求できるよう手配いたします。
7. まとめ:正確な被害者請求のために、まずはご相談を
解説した通り、自賠責保険で「7割以上の重過失」と認定され2割の減額を受けると、手元に残る慰謝料は想像以上に大きく削り取られてしまいます。
だからこそ、最初の被害者請求の段階で、事故の状況や損害の事実を正確に、そして漏れなく自賠責保険に伝えるための書類作りが非常に重要になります。
交通事故後の処理は煩雑で、お一人で進めるには精神的にも大きな負担がかかります。「これから被害者請求をしたいけれど不安だ」「どのような書類を集めればいいか分からない」とお悩みでしたら、まずは交通事故の書類作成に精通した行政書士にご相談ください。丁寧にお話を伺い、適切な手続きの道筋をご提案させていただきます。
📝 交通事故の被害者請求クイズ 📝
【第1問】自賠責保険の被害者請求において、支払額が減額されるのはどのような場合でしょうか?
【事務所概要】
行政書士やまだ法務事務所
代表者:山田 勉
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