
こんにちは。行政書士の山田です。
「親から相続した田んぼが荒れてしまった」
「高齢になり、畑の手入れができなくなった」
「農地を貸したいけれど、今後どうすればよいのかわからない」
農地を所有していても、自分で耕作を続けることが難しくなる場合があります。特に、相続によって農地を引き継いだものの、農業をする予定がない方にとっては、管理が悩みの種になることもあるでしょう。
このようなときに知っておきたいのが、「遊休農地」という制度と、農地の利用状況を確認する農業委員会の役割です。今回は、荒れてしまった農地を今後どうするか考えるために、制度の基本と所有者が注意すべきポイントを解説します。
1.草が伸びた荒れた農地は「遊休農地」になるのか?
農地の草が伸びているからといって、必ずしもすぐに法律上の「遊休農地」に該当するとは限りません。農地法では、主に次のような農地が遊休農地に関する措置の対象となります。
- 現に耕作されておらず、今後も耕作される見込みがない農地
- 周辺地域の農地と比べて、農業上の利用の程度が著しく劣っている農地
つまり、単に見た目が荒れているかどうかだけではなく、実際の利用状況や、周囲の農地と比較した利用の程度などが総合的に判断されます。
また、農業委員会は、すでに耕作されていない農地だけでなく、耕作者の死亡などによって、今後耕作する人がいなくなるおそれのある農地についても、制度に基づく対応を行います。「少し草が伸びているだけだから問題ない」と自己判断するのではなく、今後も農地として適正に維持・利用できるのかを考えておくことが大切です。
2.農業委員会による「年1回以上」の利用状況調査
農業委員会は、農地法に基づく農地の利用や権利移動などに関する事務を担う行政機関です。遊休農地への対応では、農地の利用状況を調査し、必要に応じて所有者などに今後の利用意向を確認します。
農地法第30条では、農業委員会が毎年1回以上、区域内の農地の利用状況を調査(農地パトロール)することとされています。
農地を所有している方にとっては、農業委員会は「農地を宅地にする(農地転用)ときの相談先」というイメージが強いかもしれませんが、農地を農地として維持し、有効利用を促進することも重要な役割の一つです。
3.農地から「利用意向調査」の通知が届いたら?
利用状況調査(農地パトロール)の結果、遊休農地などに該当すると判断された場合、農業委員会は、農地法第32条に基づき、所有者などに対して「利用意向調査」を行います。これは、所有者が今後その農地をどのように利用するつもりなのかを確認するための重要な調査です。
具体的には、次のような方向性から回答を検討することになります。
- 自分で耕作を再開する
- 農業委員会が農地中間管理機構(農地バンク)へ協議することに同意する(貸し付ける)
- 自ら新しい借り手(耕作できる人)を探して貸し付ける
農業委員会から利用意向調査の書類が届いた場合には、絶対に放置してはいけません。内容をよく確認し、回答期限内に自らの意向を回答することが大切です。
4.自分で耕作できない農地は「農地バンク」へ貸せる?
農地を自分で耕作できない場合、農地を借りて耕作する人に貸し付けることが有効な選択肢です。その際に知っておきたいのが、「農地中間管理機構(通称:農地バンク)」です。
農地バンクは、農地を貸したい所有者と、農地を借りて規模を拡大したい農業者などをつなぎ、農地の集積・集約化を進めるための公的な仕組みです。利用意向調査でも、この農地バンクへの協議に同意するかどうかが重要なポイントになります。
ただし、農地を所有していればどんな土地でも必ず農地バンクが借り上げてくれるわけではありません。草木が生い茂り原野化しているなど農地の状態が悪かったり、最終的な受け手となる農業者がいなかったりすると、借り受けが困難な場合もあります。まずは管轄の農業委員会に相談し、見込みを確認しましょう。
5.要注意!放置すると「固定資産税」が約1.8倍になる可能性も
利用意向調査に対して「自分で耕作する」「貸し付ける」と回答したとしても、その後何もしないままでは問題は解決しません。
農地法では、利用意向の表明後、実際にその意向に沿った取組が行われていない場合、農業委員会が農地バンクとの協議を「勧告」する仕組みがあります。
ここで特に注意が必要なのが税金面です。令和5年度の税制改正等により、農業委員会からこの「勧告」を受けた遊休農地は、ペナルティとして固定資産税の負担が約1.8倍に引き上げられる措置(課税の強化)が取られるようになりました。
「とりあえず書類だけ出して放置しよう」と考えていると、思わぬ増税という実害が生じる可能性があります。書類を受け取った場合には、実際にどのような行動をとるべきか、農業委員会としっかり相談し、速やかに対応を進めることが不可欠です。
6.所有者がわからない・相続が未了の農地はどうなる?
相続した農地について、登記名義人が亡くなったまま何世代も放置されている、相続人が複数いて意見がまとまらないなど、所有関係が複雑になっているケースも増えています。
農地法には、所有者などを確知できない遊休農地について、公示などの手続きを経て、都道府県知事の裁定により農地バンクが借り受けることができる仕組みが設けられています。
ただし、直ちにこの制度が利用できるわけではなく、厳格な要件を満たし、所定の手続きを行う必要があります。相続関係が整理できていない場合は、まず登記事項証明書などで名義を確認し、家系図の作成などによる相続人の調査から始めましょう。
7.荒れた農地を放置せず、まずは専門家へご相談を
農地を所有していても、年齢や健康上の理由、相続などによって、自分で耕作を続けることが難しくなることは誰にでも起こり得ます。管理に困っているからといって、勝手に農地を駐車場や資材置き場などに変更することはできず、農地法上の「転用許可」または「届出」が必要です。
荒れてしまった農地については、まず現在の状況を正確に把握し、放置せずに適切な対応を検討することが何より重要です。
農地の相続手続き、農地バンクへの貸付けの手続き、農地転用などでお困りの際は、行政書士やまだ法務事務所までお気軽にご相談ください。状況の整理から煩雑な手続きの代行まで、しっかりとサポートいたします。
※本記事は、遊休農地に関する制度の一般的な説明です。個別の農地に適用される手続きや要件は、農地の所在地や利用状況などによって異なります。具体的な対応については、管轄の農業委員会や当事務所などにご確認ください。
※本記事の内容は、執筆時点の法令・情報に基づき一般的な解説を提供するものであり、特定の事案についての助言・判断を目的としたものではありません。実際の手続きや対応方法は、状況・地域・関係機関・契約内容等によって大きく異なります。そのため、本記事のみを根拠として判断・行動されることはお控えいただき、個別の事情に応じた専門家への相談をおすすめいたします。本記事の内容に基づき生じたトラブル・損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
🌾 遊休農地・固定資産税チェッククイズ 🌾
【第1問】
「自分の畑の草が少し伸びて荒れているけれど、まだ大丈夫だろう」と放置しています。どんな農地が法律上の「遊休農地」の対象になるでしょうか?
【事務所概要】
行政書士やまだ法務事務所
代表者:山田 勉
所在地:奈良県生駒郡平群町光ヶ丘1丁目3番5号 (ご来所は、全予約制です。)
電 話:0745-45-6609 (受付時間 午前9時~午後5時)
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