「農地を遊ばせておくのはもったいない。でも農業を続けるのも大変…。」そんな声を耳にすることが増えています。
いま注目を集めているのが、農地の上に太陽光パネルを設置して発電しながら、下では農業を続ける「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」です。この記事では、行政書士が、仕組みやメリット、導入の注意点をわかりやすくご紹介します。
1.ソーラーシェアリングとは?
ソーラーシェアリングとは、農地に支柱を立てて上空に太陽光パネルを設置し、下ではこれまで通り作物を育てる仕組みのことです。太陽光パネルを一定の間隔で配置することで、作物が育つために必要な日照を確保しながら発電が行えます。パネルの下では農機が通れるように支柱の高さが確保され、農業と発電の両立が可能となります。
この方式の特徴は、農地を「宅地」や「発電所用地」に転用するのではなく、あくまで農地として使い続ける点にあります。そのため農地法上も、「農業を継続すること」が前提です。営農を行わず発電だけを行う場合は許可が取り消されることもあり、あくまで“農業が主役・発電が脇役”という立ち位置で計画を立てることが重要です。
2.仕組みと特徴――農業を支える発電
農地に立てられる支柱は高さ3メートル前後が一般的です。太陽光パネルは角度や配置を工夫して、作物に適した光量が届くように設計されます。葉物野菜やきのこ類など、半日陰を好む作物とは特に相性が良く、近年は稲作地帯でも実験的に導入が進んでいます。
設計の工夫次第で、農作業への支障を最小限に抑えることも可能です。支柱の間隔を広く取り、トラクターやコンバインが通れるようにすれば、従来の営農方法を大きく変えずに導入することもできます。
3.導入のメリット――農地を守りながら収益を安定化
第一のメリットは、収入の安定化です。農業は天候や市場価格に左右されやすく、毎年の収益が変動しやすい産業です。ソーラーシェアリングによって発電収入が加わることで、経営の柱が二本になります。農業の不作時にも発電による一定の収益が見込めるため、生活の安心感が高まります。
次に、遊休農地を有効活用できる点です。高齢化や後継者不足で耕作放棄地が増える中、農地をそのまま維持しながら発電による収益を得られるのは大きな魅力です。雑草や害虫の発生を防ぎ、周囲の景観を守る効果もあります。
さらに、環境面での意義も大きいです。農地を活かした再生可能エネルギーの普及は、地球温暖化対策の一助となります。自分の土地が地域や社会の役に立つという誇りを感じられるのも、この仕組みの魅力です。
4.注意点とリスク――「農業を続ける」ことが前提
注意すべきは、ソーラーシェアリングがあくまで「営農型」であるという点です。営農が途絶えると、許可が取り消されたり、更新が認められない場合もあります。つまり、発電設備を設置した後も農作業を続けられる体制を整えておくことが欠かせません。
また、初期費用は数百万円規模になることが多く、草刈りや設備点検などの維持管理費用もかかります。売電単価は年々下がっているため、導入時には慎重な収支計画を立てる必要があります。行政手続きも複雑で、農地法や都市計画法、農業振興地域制度など複数の法律が関係します。
5.導入に向けたステップ
導入を検討する際は、まず土地の条件を確認します。農業委員会や市町村の担当課で、農地の区分(青地・白地)や都市計画区域(市街化区域・市街化調整区域)を確認し、対象地での導入可否を判断します。その上で、営農計画と設備計画を作成します。
どんな作物を育て、どのように発電設備を設計するのか。農作業への影響を最小限に抑えつつ、安全で撤去しやすい構造になっているか。これらを整理して、農地法に基づく「一時転用許可」などの申請を行います。
許可後は、電力会社との売電契約、工事、そして運用開始。運用後も、営農の継続や収穫実績の報告が必要です。専門家に相談しながら、順序立てて進めていくことが成功への近道です。
6.費用と採算の考え方
初期費用は規模や地形によって異なりますが、支柱やパネル、工事費、設計・申請費を含めて数百万円かかるケースが一般的です。売電収入と合わせて考えると、十数年程度で回収できる可能性もあります。ただし、発電量や電力買取制度の変化、天候による変動などを踏まえ、慎重な試算が求められます。
最悪のケースでも経営が続けられるように計画するのが大切です。無理をせず、小規模から始めるのも一つの方法です。
7.まとめ――農地を守り、未来につなぐ新しい形
ソーラーシェアリングは、農地を失わずに活かし、農業とエネルギーを両立させる新しい仕組みです。営農を続ける意思があり、土地を守りたいと考える方にとって、有効な選択肢のひとつです。焦らず、土地の状況を整理し、家族や地域、専門家と相談しながら進めていくことが成功の鍵です。
※地域や制度の運用状況によって必ずしも許可されるとは限りません。最新情報は自治体や関係機関の公表資料等をご確認ください。
クイズ:ソーラーシェアリングの基礎理解
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