「相続は家族の話だから、だいたい分かる」と思っていても、いざ具体的に考えると「誰が相続人になるのか」「順番に決まりはあるのか」が曖昧な方は多いものです。 この記事では、相続の基本中の基本である「相続の順位」について、行政書士が実例を交えてわかりやすく解説します。
1. 相続の順位とは？
相続の順位とは、亡くなった人（被相続人）の財産を「誰が相続するのか」を決める法律上の優先順位のことです。 相続の順番は民法で明確に定められており、第1順位は子ども（直系卑属）、第2順位は父母（直系尊属）、第3順位は兄弟姉妹となっています。 これらの相続人に加え、配偶者（夫・妻）は常に相続人となるのが特徴です。
配偶者は常に相続人
配偶者は、どの順位の相続人がいる場合でも必ず相続人になります。 つまり、子どもがいる場合も、親がいる場合も、兄弟姉妹がいる場合も、配偶者は常に一緒に相続する権利があります。 一方で、内縁関係（婚姻届を出していないパートナー）は法律上の相続権を持ちません。ここは誤解が多いので注意が必要です。
2. 第1順位：子ども（直系卑属）が相続する場合
まず最初に相続人となるのは、被相続人の子どもです。 配偶者と子どもが相続人になるケースが最も一般的で、法律上の割合（法定相続分）は、配偶者が1/2、子どもが1/2を分け合う形になります。 たとえば、配偶者と子どもが2人いる場合、子ども2人で1/2を分け合うので、それぞれ1/4ずつ相続します。
また、子どもがすでに亡くなっている場合には、その子どもの子、つまり孫が「代襲相続人」として相続する権利を引き継ぎます。 これは「代襲相続」と呼ばれる仕組みです。
3. 第2順位：親（直系尊属）が相続する場合
子どもがいない場合、次に相続人となるのが被相続人の父母です。 もし両親がすでに亡くなっている場合は、祖父母が相続人になります。 この場合、配偶者がいれば、相続分は配偶者が2/3、親が1/3です。 たとえば、子どもがいない夫婦で夫が亡くなった場合、妻が2/3を、夫の両親が1/3を受け取ります。
ただし、実際の相談現場では「親に相続させたくない」という声もよく聞かれます。 そのような場合は、生前に遺言書を作成しておくことで、ある程度の調整が可能です。 行政書士としても、こうした意思を明確に残すことをおすすめしています。
4. 第3順位：兄弟姉妹が相続する場合
子どもも親もいない場合、次に相続人となるのが兄弟姉妹です。 この場合、配偶者と兄弟姉妹が相続人となり、配偶者の取り分は3/4、兄弟姉妹の取り分は1/4です。 兄弟姉妹が複数いる場合は、その1/4を人数で等分します。
また、兄弟姉妹のうち亡くなっている方がいる場合、その方の子（つまり甥や姪）が代襲相続人となります。 ただし、代襲は1代限りです。甥姪が亡くなっている場合、その子どもまでは相続できません。
5. 相続人が誰もいない場合はどうなる？
子どもも親も兄弟姉妹もおらず、配偶者もいない場合、相続人はいないことになります。 その場合、財産は最終的に国庫（国のもの）に帰属します。 ただし、長年面倒を見てくれた知人などに財産を渡したい場合は、遺言書を作成しておくことで実現できます。 「身寄りがないから関係ない」と思わず、遺言書の準備をしておくことが大切です。
6. 再婚・連れ子・養子がいる場合の相続順位
近年は再婚や養子縁組の家庭も増えており、相続順位の判断が複雑になるケースが多く見られます。 たとえば、再婚相手の連れ子は、養子縁組をしていなければ法的には相続人になりません。 一方で、養子にした場合は実子と同じように第1順位の相続人となります。 また、実子と養子の両方がいる場合は、それぞれ平等の権利を持ちます。
このように「誰が法的に相続人となるのか」は、家族関係によって大きく変わります。 戸籍の確認や事前の話し合いを行わないまま相続が発生すると、思わぬトラブルに発展することもあります。 行政書士としては、相続が発生する前に一度、家族関係を整理しておくことをおすすめします。
7. 行政書士に相談するメリット
相続の順位を理解していても、実際の手続きになると戸籍の収集や法定相続情報一覧図の作成など、専門的な作業が数多くあります。 特に代襲相続や養子縁組が絡む場合は、誰が相続人になるのかを正確に特定するために多くの戸籍を遡る必要があります。 行政書士は、こうした戸籍調査から相続関係説明図の作成まで一貫してサポートできます。 また、遺産分割協議書の作成や遺言書の相談など、相続全般を通じた支援も可能です。
8. まとめ：相続の順位を知ることが、家族の安心につながる
相続の順位は、家族にとって「誰がどのように財産を受け継ぐか」を決める重要なルールです。 順番を正しく理解することで、思わぬ争いを防ぎ、円満な相続につながります。 もし「うちは少し複雑かも」と感じたら、早めに行政書士などの専門家に相談しておくと安心です。 相続は“知って備えること”から始まります。ご家族の安心のために、今できる一歩を踏み出してみましょう。
※本記事は一般的な内容を解説したものであり、実際の家族構成や財産状況により異なる場合があります。具体的なご相談は専門家へお寄せください。
クイズ：相続の順位（配偶者・子・親・兄弟）
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