「遺言書があるのに相続人で遺産分割協議をした場合でも有効か?」

「父の遺言書が見つかったけれど、内容が現実に合っていない」
「兄弟全員が納得して別の分け方にしたい」

そんなときに浮かぶ疑問――『遺言書があるのに、遺産分割協議をしてもいいの?』
実は、ここには“法律と現実のズレ”が存在します。 今回は、行政書士としての立場から、 遺言と協議、どちらが優先されるのかをやさしく解説します。

更新日:2025年11月3日

1. 遺言書があるなら、それが“最優先”のはずだけれど…

遺言書は、亡くなった方の最終意思を形にしたものです。 原則として、遺言に書かれた内容が法律上の最優先になります。 つまり、「長男に自宅を相続させる」と書かれていれば、 その通りに登記や名義変更を進めるのが基本です。

ところが、現場ではこうした声も多いのです。
「父の遺言どおりにすると、実家を維持できない」
「相続税が高くなってしまう」
「母の生活費をどう確保すればいいのか」 遺言が“法的に正しく”ても、「現実的でない」ことがあります。

2. 遺言書があっても、相続人全員が同意すれば協議は可能

結論から言えば、相続人全員が合意していれば、遺言と違う分け方をしても有効です。 民法では「遺言の効力は、相続人全員の合意により変更できる」と明記されていませんが、 裁判例や実務上、“全員が自由意思で同意した場合”には認められています。

ただし、ここには重要な条件があります。 一人でも反対する相続人がいれば、無効になるという点です。 たとえば4人兄弟のうち3人が賛成でも、1人が「遺言どおりにすべき」と主張したら、 その協議書は成立しません。

3. 「遺言より協議を優先した」ある家族のケース

ある事例をご紹介します。 ご家庭で、お父さんが遺言書を残して亡くなりました。 内容は「長男に自宅を相続させる。次男には預金を全額渡す」というもの。 しかし、自宅には高齢のお母さんが住んでおり、長男も遠方に暮らしていました。

兄弟は話し合い、こう決めました。 「母が生きている間は、自宅の名義を変えず、預金から生活費を支出する」。 その結果、遺言書とは異なる分け方になりましたが、全員の署名・実印付きで協議書を作成し、 トラブルなく進みました。

このように、「家族全員の納得」が前提であれば、 遺言書よりも現実的な協議内容を優先できるのです。

4. ただし「第三者との関係」には注意が必要

遺言と異なる協議が有効なのは、あくまで相続人同士の間だけ。 不動産の登記や金融機関の手続きでは、遺言書の内容が基準になります。 そのため、遺言とは違う協議書を提出しても、 銀行が手続きを拒否するケースも少なくありません。

理由は、遺言書は被相続人の最終意思として法的に強い効力を持つため、金融機関は、トラブルを避けるため、まず有効な遺言書の存在を確認し、その内容に従った手続きを求められるためです。

また、遺言執行者が指定されている場合、 協議を進めるにはその執行者の承諾も必要です。 実務では、遺言執行者と協議書の内容をすり合わせ、 登記・相続税申告までを整合させることが大切です。

5. トラブルになる“よくある落とし穴”

  • 相続人の一人が署名していなかった:全員の合意が条件なので、無効になります。
  • 相続放棄した人を含めてしまった:放棄者は相続人でないため、協議に参加させてはいけません。
  • 遺留分(最低限の取り分)を無視した:その相続人から後で請求される可能性があります。
  • 書面に残していない:口約束だけでは法的効力が認められません。

「仲がいいから大丈夫」と思っても、後から誤解が生じるのが相続です。 書面で明確に残すことが、家族の信頼を守る第一歩になります。

6. 「現実的な協議書」を作るときのポイント

遺言より協議を優先する場合、行政書士などの専門家に依頼することで、 書面の内容を法的に整えることができます。 ポイントは次の3つです。

  1. 全員の署名・押印(実印)をそろえる
  2. 印鑑証明書を添付する
  3. 遺言書の存在を明記し、「全員が合意のうえ変更した」旨を書く

この形で作成すれば、登記や税務の手続きでもスムーズに進みやすくなります。 逆に、自己流の協議書は後のトラブルのもとになりがちです。

7. まとめ:遺言は“絶対”ではない。けれど、尊重が原則。

遺言書は、亡くなった方の思いを形にした大切な書面です。 だからこそ、「遺言と違っても全員が納得できる形にしたい」というときは、 その思いを踏まえたうえで、慎重に進める必要があります。

家族の関係性や生活状況は、時間とともに変わります。 遺言は“当時の最善”であったのかも知れませんが、今の現実には合わないこともあります。 そんなときこそ、冷静に、そして誠実に話し合うことが大切です。

※この記事は一般的な法律知識をもとに執筆しています。実際の相続内容によって結論は異なります。詳しくは専門家へご相談ください。

📝 遺言と相続の法律クイズ 📝

【第1問】父の遺言書に「長男に全財産を相続させる」と書かれていても、相続人全員(長男・次男・母)が合意すれば、遺言と異なる分け方をすることは法的に可能でしょうか?

✅ クイズクリア!お疲れ様でした!

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