実家のことを考えるとき、誰しも単なる「建物」以上の想いがあるのではないでしょうか。
子どもの頃の記憶、家族の食卓、笑い声、泣いた夜。
それらすべてが詰まった場所だからこそ、実家のことは感情が優先され、「名義」や「相続」の話になると、つい目をそらしてしまいがちです。
しかし、行政書士としてご相談を受けてきた中で痛感するのは、「実家の名義を先延ばしにしたことで、家族の未来が大きく狂ってしまった」という事例が多いという現実です。
1. “実家の名義”の話は、親の老いと向き合ことだから言い出せない。
「実家の名義って、誰になってるんだろう?」
そう思いながらも、親にはなかなか聞けずにいると中高年の方から、聞くお話です。
それも無理もありません。
「実家の名義を確認する」という行為は、親の老いやいずれ訪れる別れを意識してしまう話題だからだと思います。
名義の確認=相続・財産・老い・終活。どうしても暗いイメージがつきまといます。
自分が中高年になる頃、親の体力や生活にはっきりとした変化が見えてきます。
昔は一人で何でもこなしていた親が、書類の細かい文字を読みにくそうにしたり、病院通いが増えたり。
「そのうちでいいか」が、「そろそろ考えないといけない」に変わっていくタイミングです。
親が元気なうちに名義の話をしておくことは、決して“悪いこと”ではありません。
むしろ、親のこれからの生活と、ご家族の未来を守るための、やさしい準備だと私は感じます。
2. 実家の名義を放置すると、人生が狂ってしまうことも。
「名義なんて、困った時に確認すればいい」そう思って先送りしてきた結果、いざという時に身動きが取れなくなるケースが少なくありません。
2-1.親が認知症になると、名義の問題は一気に“重くなる”
親が認知症になり、判断能力が低下すると、家の名義変更や売却、賃貸に出すことが大変難しくなります。
成年後見制度を使う道もありますが、
- 家庭裁判所への申立てが必要
- 後見人等への報酬が継続的にかかってしまう
- 不動産を売るには裁判所の許可が必要
というように、手続きも費用も、想像以上の負担となります。
「もう少し早く名義を確認しておけばよかった」と後悔されるご家族は、決して少なくありません。
2-2.固定資産税・売却・リフォームなどすべて止まってしまうことも
こんなご相談もあります。
- 登記簿を見たら、名義がすでに亡くなった祖父母のままだった
- 相続登記がされておらず、「名義上の持ち主」が誰なのかハッキリしない
- 売りたくても、誰の同意が必要か分からない
実家をどう扱うにしても、まずは「今、この家は誰の名義なのか」が分からなければ、一歩も進めません。
固定資産税の通知が届いていても、「とりあえず払っているだけ」で中身を理解していないケースも多く見られます。
2-3.兄弟姉妹の関係が、名義をきっかけに一気に悪化することも
親が亡くなってから初めて名義を確認し、「実家をどうするか」の話し合いが始まるとき、それまで表に出ていなかった不満や感情が、一気に噴き出すことがあります。
「長男だから当然、実家は自分が継ぐつもりだ」
「介護をほとんどしていない人が、家の話だけ口を出すなんて」
「自分たちの生活もあるから、家は売ってお金で分けてほしい」
名義の問題が、そのまま“家族の関係の問題”として表面化してしまうのです。
もし、生前に名義や今後の方向性を親子で共有していれば、避けられた衝突も少なくないと思います。
3. 親が元気なうちにしかできないことがある
「まだ大丈夫」「そのうち聞こう」。
実家の名義の話は、ついこうして先送りにしてしまいがちです。
けれども、名義の問題は、親の判断能力がしっかりしている今だからこそ、スムーズに解決できるテーマでもあります。
たとえば、
- 実家を誰が引き継ぐのか
- 売却して老後の資金に充てるのか
- 空き家にしないために、どう活用するのか
こうした話は、親の意思がわからなければ決められません。
親が元気なうちであれば、本人の希望を確認しながら、一緒に方向性を考えることができます。
逆に、認知症や病気で判断能力が低下してからでは、
「本当はどうしたかったのか」が分からないまま、手探りで子が迷い続けることになってしまいます。
4. 名義の確認は“財産チェック”ではなく、親の人生を振り返る大切な時間
「名義を確認する」と聞くと、どうしても“お金の話”というイメージがつきまといます。
しかし、実際に親子で名義の話をしてみると、そこには意外なほど温かいやりとりが生まれます。
「この家を建てたのは、あんたが小学校に上がる前やったな」
「お父さん、あのときはボーナスを全部つぎ込んでな」
「お母さんは、ここに庭がほしくてねえ」
名義の確認は、親がこれまでどんな思いで家族を守ってきたのかを知る時間にもなります。
単なる登記上の情報の確認ではなく、親の人生の物語を聞くきっかけにもなるのです。
5. 実家の名義、どう切り出せばいい?
とはいえ、どのように切り出せばいいのか悩む方も多いと思います。
そこで、角が立ちにくい言い方の一例をご紹介します。
いきなり、
「この家の名義、誰になってるの?」
と聞くと、親は身構えてしまうかもしれません。
そんな時は、こんなふうに切り出してみてはどうでしょうか。
「最近、周りでも親の相続や実家のことで揉めてる話をよく聞いてね。
もしもの時にバタバタしせんように、今のうちに名義とかを確認しておきたいんやけど、どうなってるの?」
大切なのは、「お金のために聞いているのではなく、親のため・家族のためを思って確認したい」という気持ちを、言葉にして伝えることです。
それでも自分だけでは不安な場合は、
行政書士や専門家に同席してもらい、「専門家に相談したいから、一緒に確認させてほしい」と伝える方法もあります。
6. 名義を確認すると見えてくるこれからのこと
実家の名義がはっきりすると、ようやく「これからどうするか」を具体的に考えられるようになります。
たとえば、こんな選択肢が見えてきます。
- 親が元気なうちは、そのまま住み続けてもらう
- いずれ施設に入ることを見据え、売却や賃貸を検討する
- 子ども世帯の誰かが住み継ぐ前提で、リフォームや名義変更を考える
- 空き家にならないよう、早めに活用方法を決めておく
名義があいまいなままだと、「どうしようか」という話すら始められません。
逆に、名義が明確になった途端、家族会議の内容が一気に前向きになることもよくあります。
実家をどうするかは、お金の問題だけでなく、
親の晩年の過ごし方、あなたのこれからの生活スタイル、兄弟姉妹との距離感にまで関わってきます。
7. まとめ “今の5分の確認”が、10年後の家族を救うことも
実家の名義の話は、どうしても後回しにされがちです。
忙しい日常の中では、「また今度」「落ち着いたら」と先送りしたくなる気持ちも、よく分かります。
しかし、親が高齢になった今こそ、「そのうち」ではなく「今」動き出す意味があります。
今日、固定資産税の納付書を取り出して「名義は誰になっている?」と確認してみる。
登記事項証明書(登記簿)を取り寄せて、現状を知ってみる。
そして、必要に応じて専門家に相談してみる。
その小さな5分・10分の行動が、
10年後、20年後のあなたと家族を大きなトラブルから守ってくれるかもしれません。
実家は、あなたと家族の思い出が詰まった、大切な場所です。
だからこそ、その行く末を「なんとなく」のままにせず、
親が元気な今、一緒に考えてみる時間を持っていただきたい。
行政書士として、そして同じように親を持つ一人の人間として、心からそう願っています。
🏠 実家の名義と相続の重要度チェッククイズ 📝
【第1問】実家の名義確認を先延ばしにすることが、特に深刻な問題を引き起こすのは、親の健康状態がどうなった時ですか?
【事務所概要】
行政書士やまだ法務事務所
代表者:山田 勉
所在地:奈良県生駒郡平群町光ヶ丘1丁目3番5号 (ご来所は、全予約制です。)
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