「遺言は、認知症になってからでも書けるんでしょ?」 そう思っている方は少なくありません。しかし実務の現場では、認知症が進行してしまうと、遺言書が無効になってしまうリスクが非常に高くなります。
病院のベッドの上で、家族に囲まれながら「今のうちに遺言を書いてほしい」と頼まれても、その時点で本人の判断能力が低下していれば、残念ながら手遅れとなり遺言は成立しません。 つまり遺言は“書きたいと思ったとき”ではなく、“書けるうちに書いておくもの”なのです。
そして近年、遺言とセットで検討されることが増えているのが「任意後見契約」
1. なぜ認知症になると遺言が問題になるのか
遺言書が有効であるためには、“本人に判断能力があること”が必須条件です。 この判断能力があいまいだと、「本当に本人が理解して書いたのか?」という点で争いになり、遺言無効の裁判へ発展するケースもあります。
たとえば、次のような状態では遺言の有効性が疑われやすくなります。
- 認知症の診断を受けている
- 長期入院中で意識が朦朧としている
- 家族の誘導に従って書いたように見える
- 後から発見された遺言内容が極端に偏っている
遺言書は、亡くなった後に初めて開封されることが多いため、本人の意思確認ができません。だからこそ、書くタイミングがとても重要です。
2. 遺言を先送りにすると起きがちなトラブル
実務でよく見られるのは、「家族の仲はいいから遺言はいらない」と思って何もしなかったケースです。しかし、亡くなった後は状況が変わります。
・自宅の処分の意見が割れる ・介護をした家族が不満を抱える ・亡くなる直前に付き添っていた人の取り分が問題視される ・相続人同士の連絡が取れなくなる
もともと仲が良かった家族でも、遺産の話し合いで険悪になってしまうことは珍しくありません。 「争族」にならないための最も現実的な対策が遺言書です。
3. 「まだそんな歳じゃない」より「書けるうちに」
遺言に必要な判断能力は、医学的な診断書の基準ではなく、民法上の「意思能力」が軸になります。これは一概に何歳以上などとは決まっていません。
つまり、80代でもしっかりしていれば問題ありませんし、60代でも判断能力が低下すれば無効のリスクが生じます。 「まだ早い」という感覚ではなく、書けるうちに、元気なうちに準備しておくことが何より確実です。
4. 遺言だけでは足りない?老後には「任意後見」が必要な理由
遺言は「亡くなった後」の財産の行き先を決めるものです。 一方で、認知症が進行した場合に問題となるのは、“亡くなる前の財産管理”です。
・銀行からお金が引き出せない ・介護施設入所の契約ができない ・不動産の売却や管理が止まる ・詐欺的商法に引っかかる可能性が上がる
これらをカバーする制度が任意後見契約です。 元気なうちに信頼できる人(配偶者・子・専門職後見人など)を決めておくことで、認知症などで判断能力が低下したあとに、財産や生活の手続きをその人に任せることができます。
遺言は「死後の対策」、任意後見は「生前の対策」。 この二つはセットで考えることが、老後の安心につながります。
5. 遺言+任意後見で実現できる「安心の流れ」
実際の実務では、以下のような形がもっともスムーズです。
- 元気なうちに遺言書を作成
- 同時に任意後見契約を公正証書で締結
- 本人の判断能力が低下した時点で任意後見がスタート
- 亡くなった後は遺言によって財産がスムーズに分配
この流れなら、「判断能力低下 → 相続」という老後の変化に対応できずに困る場面を大幅に減らすことができます。
6. 実務目線で見た“準備のベストタイミング”
行政書士として相談を受けていると、次のタイミングで準備しておく方は非常にスムーズです。
- 退職を迎えるころ
- 年金生活に入ったころ
- 持病を抱え始めたころ
- 夫婦どちらかが要介護認定を受けたころ
人生の状況が変わる節目は、老後の計画を見直す良いタイミングです。
7. 家族の不安を減らすという“副作用”
遺言と任意後見を整えた方の多くが、その後の相談で次のように話されます。
「子どもたちに迷惑をかける不安がなくなった」 「妻(夫)に全部任せきりになる怖さが減った」 「老後の生活の設計ができて、気持ちが軽くなった」
財産の安心だけでなく、家族の気持ちを守る効果も大きい制度です。
まとめ:老後の不安は制度を知ることで小さくなる
認知症になってから遺言を書くことはできません。 「そのうち」「落ち着いたら」という気持ちのまま先延ばしにすると、せっかくの意思が実現できなくなることがあります。
老後の備えを確実にするなら、
遺言書の作成 + 任意後見契約の締結
この二つを押さえておくだけで、将来の安心感が大きく変わります。
気になることがあれば、まずは専門家に相談してみてください。 状況に合わせて、最適な進め方をご提案できます。
老後の安心のために、できることから一歩ずつ。行政書士としてサポートいたします。
📝 認知症と法律の備えクイズ 📝
【第1問】遺言書を作成する際、法的に有効とするために最も重要なタイミングはいつでしょうか?
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