相続手続き期限カレンダー|3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月の「壁」を乗り越えるために

大切なご家族を亡くされたとき、深い悲しみの中にいながらも、現実は待ってくれません。通夜や葬儀、初七日……。慌ただしい日々が過ぎ去り、少し落ち着いたかなと思った頃に、ふと不安になるのが「相続手続き」のことではないでしょうか。

「役所への届け出はいつまで?」
「税金がかかるとしたら、期限はあるの?」
「実家の名義変更は急ぐべき?」

行政書士として日々ご相談を受けていると、こうした「期限」に関する不安を抱えている方が非常に多いと感じます。実は、相続手続きには法律で厳格に決められた「絶対に守らなければならない期限」がいくつか存在します。これを私はよく「相続の壁」と呼んでいます。

この「壁」を知らずに放置してしまうと、思わぬ借金を背負ったり、本来払わなくて済んだはずの税金を払うことになったりと、大きな不利益を被る可能性があります。

今回は、一介の行政書士の視点から、カレンダーをめくるように時系列で「相続手続きの期限」についてお話しします。難しい法律用語はなるべく控えました。ご家族を守るための「読み物」として、最後までお付き合いいただければ幸いです。

1. 悲しみの中でも動かなければならない「最初の7日間」

まずは、相続発生(お亡くなりになった日)から直近の手続きです。ここは皆さんも葬儀社の方などのサポートで乗り切ることが多い期間ですが、改めて確認しておきましょう。

もっとも重要なのは「死亡届」の提出です。これは死亡の事実を知った日から7日以内に行う必要があります。これを出さないと、火葬許可証が発行されず、葬儀を行うことができません。通常は葬儀社の方が代行してくれるケースが大半ですが、法律上の期限がある最初の手続きです。

また、年金を受給されていた方の場合は、「年金受給権者死亡届」が必要です。厚生年金なら10日以内、国民年金なら14日以内という期限があります。これを忘れていると、亡くなった後も年金が振り込まれ続け、後から一括返済を求められるという面倒な事態になりかねません。

さらに、世帯主が変わる場合の「世帯主変更届」や、介護保険証の返納なども14日以内が目安です。

最初の2週間は、「役所関係の事務手続き期間」と捉えておくとよいでしょう。ただ、ここまではあくまで「事務処理」です。本当の意味で、ご家族の資産や人生に関わる重たい判断が迫られるのは、もう少し後、四十九日が近づく頃からです。

2. 人生を左右する最初の分岐点「3ヶ月の壁」

相続手続きにおいて、私が最も注意を喚起したいのが、この「3ヶ月の壁」です。
これは、「相続放棄」および「限定承認」の申述期限です。

この3ヶ月という期間は、あっという間に過ぎ去ります。四十九日の法要を終え、遺品整理を始めた頃にはもう期限ギリギリ、ということも珍しくありません。

なぜ「3ヶ月」が重要なのか?

相続は「プラスの財産」だけでなく「マイナスの財産(借金)」も引き継ぐものだからです。もし、亡くなったお父様に多額の借金があった場合、3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをしなければ、その借金をすべて引き継ぐことになります(単純承認)。

「うちは借金なんてないから大丈夫」。そう思っている方ほど、注意が必要です。連帯保証人になっていた事実が後から発見されたり、クレジットカードの未払いが積み重なっていたりすることは、決してドラマの中だけの話ではありません。

以前、ご相談に来られた方で、期限の3ヶ月を数日過ぎてから督促状が届き、真っ青になって駆け込んでこられた方がいらっしゃいました。原則は3ヶ月。この間にやるべきことは、徹底的な「財産調査」です。

3. 意外と見落としがちな「4ヶ月の壁」

3ヶ月の壁を越えて一安心……といきたいところですが、その翌月にやってくるのが「4ヶ月の壁」です。
これは、「準確定申告(じゅんかくていしんこく)」の期限です。

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、簡単に言えば「亡くなった方の確定申告」のことです。

通常、確定申告は翌年の2月16日から3月15日に行います。しかし、亡くなった方の場合は、相続人が代わりに、亡くなった日から4ヶ月以内に申告と納税を行わなければなりません。

  • 亡くなった方に事業所得や不動産所得(家賃収入など)があった
  • 年金収入が400万円を超えていた
  • 高額な医療費を支払っていた(還付の可能性)

「サラリーマンだったから関係ない」と思いきや、副業をしていたり、親から相続した土地を貸していたりするケースもあります。4ヶ月という中途半端な時期に来るため、ついうっかり忘れがちな期限ですが、ペナルティ対象になりますので早めの確認が不可欠です。

4. 経済的なインパクトが最も大きい「10ヶ月の壁」

さて、いよいよ相続手続きのラスボスとも言えるのが「10ヶ月の壁」
これは、「相続税の申告・納税」の期限です。

「うちは庶民だから相続税なんて関係ない」と思いきや、都心部に自宅を持っている場合や、生命保険金などが合算されると、意外と基礎控除のラインを超えてしまうことがあります。

特例を使うためには申告が必須!

土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」などで相続税をゼロにするには、「10ヶ月以内に申告書を提出すること」が条件です。期限を過ぎると特例が使えず、多額の税金が発生するリスクがあります。

また、この10ヶ月という期間は、「遺産分割協議(誰が何をどれだけ貰うかという話し合い)」をまとめる期限(事実上の目安)でもあります。話し合いがまとまっていないと、特例が使えないなどのデメリットが生じるからです。

5. 1年以降にやってくる「遺留分」と「法改正」の話

10ヶ月の壁を越えれば、ひとまず「お上」に対する緊急の手続きは一段落です。しかし、カレンダーはまだ続きます。

■ 1年の壁:遺留分侵害額請求

「愛人に全財産を譲る」といった極端な相続が行われた場合、他の相続人は最低限の取り分(遺留分)を請求できます。この請求期限が、相続開始と遺留分の侵害を知った時から1年です。

■ 3年の壁(新ルール):相続登記の義務化

ここで、近年の大きな法改正について触れておかなければなりません。
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。

具体的には、不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記申請をしなければなりません。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。「いつかやればいいや」はもう通用しません。

6. 期限を守ることは、心の整理をつけること

ここまで、3ヶ月、4ヶ月、10ヶ月……と、期限についてお話ししてきました。文字にすると「なんて面倒なんだ」とため息をつきたくなるかもしれません。

しかし、これらの期限は、単に国民を急かすためにあるものではないと、私は考えています。

「3ヶ月以内に借金の整理をしましょう」
「10ヶ月以内に遺産の分け方を決めましょう」
「3年以内に名義を変えて、新しい所有者として大切に使いましょう」

法律が定めたこれらの期限は、ある意味で「心の整理をつけて、残された人が前を向いて歩き出すためのマイルストーン(道しるべ)」のような役割を果たしているようにも思えるのです。

手続きは事務作業ですが、それは故人との「最後の対話」の時間でもあるのです。

7. 専門家を「ペースメーカー」として使ってください

とはいえ、初めての相続で、これら全てのスケジュールを完璧に管理するのは大変な負担です。役所の窓口は平日しか開いていませんし、集める戸籍謄本の数は膨大になることもあります。

そんな時こそ、私たち行政書士のような専門家を思い出してください。

私たちは、単に書類を作るだけの代書屋ではありません。
「今はまず、これをやりましょう」「次は来月までに、これを決めましょう」といったように、マラソンのペースメーカーのように、皆様の横で伴走するのが仕事です。

※本記事の内容は、執筆時点の法令・情報に基づき一般的な解説を提供するものであり、特定の事案についての助言・判断を目的としたものではありません。実際の手続きや対応方法は、状況・地域・関係機関・契約内容等によって大きく異なります。そのため、本記事のみを根拠として判断・行動されることはお控えいただき、個別の事情に応じた専門家への相談をおすすめいたします。本記事の内容に基づき生じたトラブル・損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

📅 相続手続きの期限・法律クイズ 📝

【問】借金を背負わないために最も重要な「相続放棄」や「限定承認」。これを家庭裁判所に申述しなければならない法的な期限(壁)は、原則としていつまででしょうか?

🎉 全問終了!お疲れ様でした!

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