「親から譲り受けた農地に、息子の家を建てたい」
「安く売りに出ている畑を買って、資材置き場にしたい」
日頃、行政書士として仕事をしていると、こういったご相談をよくいただきます。ご自身の土地を活用したい、あるいは安価な土地を購入して事業に使いたいというお気持ち、とてもよく分かります。
しかし、残念ながら私の口から「申し訳ありませんが、その土地では許可が下りない可能性が高いです」とお伝えしなければならないケースが、実は少なくありません。
農地法という法律は、私たちが想像している以上に「農地を守ること」を強力に推し進めています。今回は、一介の行政書士として、「農地転用(農地を農地以外にすること)の許可が下りない、あるいは極めて難しい土地」をワースト3形式でご紹介します。
1. なぜ自分の土地なのに自由に使えないのか?(農地法の壁)
ランキングに入る前に、大前提となるお話を少しだけさせてください。
「自分の土地なんだから、好きにしていいじゃないか」
そう思われるのは当然です。しかし、日本という国において、農地は「食料生産のための大切な資源」として扱われています。
一度コンクリートを流して宅地にしてしまえば、もう二度とそこで作物は育ちません。日本の食料自給率を守るため、国は「良い農地は絶対に守る(転用させない)」、「市街地に近い農地なら転用してもいい」というふうに、土地ごとに厳格な色分けをしています。
この「色分け(立地基準と言います)」こそが、許可が下りるかどうかの最大の分かれ目なのです。それでは、行政書士が図面を見た瞬間に「これは厳しいな……」と頭を抱える土地ワースト3を発表します。
ワースト 1位地図上で青く囲まれた聖域「農業振興地域(青地)」
行政書士が相談を受けて真っ先に確認するのが、「その土地が農業振興地域内の農用地(通称:青地)」に入っているかどうかです。
これがワースト1位、つまり「最も転用が難しい土地」です。
自治体の担当窓口に行き、備え付けの地図を確認すると、農地の一部が青く塗られていたり、色枠で囲まれていたりします。このエリアは、行政が「向こう10年以上にわたって農業を振興する」と決めた、いわば農業の聖域です。
ここにある農地は、原則として転用できません。
もしここに家を建てたい場合は、まずこの「青地」の指定から外してもらう手続き(農振除外申請)が必要になります。
「じゃあ外せばいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、この除外申請のハードルがとてつもなく高いのです。
さらに、手続きには半年〜1年以上の時間がかかります。「来月から着工したい」というご相談でこの土地が出てくると、残念ながら計画の白紙撤回を余儀なくされることがほとんどです。
ワースト 2位生産性が高すぎる優良農地「第1種農地」
青地ではないから大丈夫、と思って次に立ちはだかる壁が「第1種農地」という区分です。
これは、簡単に言えば「農業をするのに最高の条件が整っている土地」です。
- 10ヘクタール以上の一団の農地にある
- 土地改良事業(ほ場整備など)が行われてから8年以内である
- 高性能な農業機械が入れるほど整備されている
こういった特徴を持つ農地です。国としては、多額の税金を投入して整備した立派な農地ですから、簡単に潰されたくありません。そのため、原則として転用は不許可となります。
ワースト 3位土地の形状や周辺環境が悪い「インフラ未整備地」
ワースト3は、法律上の区分というよりは、物理的な条件で許可が下りないケースです。これを「一般基準」の問題と呼びます。
排水計画が立たない土地
家を建てたり駐車場にしたりすれば、雨水や生活排水が出ます。それを流すための水路が近くになかったり、あっても水利組合の同意が得られなかったりする場合です。
道路に接していない土地
建築基準法とも関わりますが、そもそも道路に接していない、あるいは進入路が確保できない土地も転用できません。「農道」しか通っていない場合、その農道が建築用の道路として認められるかどうかが大きなハードルになります。
2. 「許可が下りない」と言われても確認すべきこと
ここまで厳しい話ばかりしてしまいましたが、ここで読むのを止めないでください。
一見「ダメだ」と思われる土地でも、特例などが見つかることがあります。諦めて土地を売却したり、放置して荒れ地にしたりする前に、以下の3点を確認してみてください。
諦める前の3つのチェックポイント
- その土地は本当に「青地」のままか?
自治体の見直しによって、実は青地から外れている(白地になっている)ケースが稀にあります。 - 「農家住宅」や「分家住宅」の可能性はないか?
ご実家が農家であれば、特例が使える可能性があります。 - 目的を変えることで許可が出る可能性
「住宅」はダメでも、「地域の特産品販売所」や「福祉施設」など、公益性が高い施設なら許可が出る場合があります。
3. 農地転用は「情報戦」。専門家への相談で道が開けることも
農地転用の可否は、インターネットで検索しても「一般論」しか出てきません。なぜなら、最終的な判断は「その土地を管轄する各市町村の農業委員会」に委ねられている部分が大きいからです。
A市ではダメだったけれど、隣のB町では似たような条件で許可が下りた、ということが日常茶飯事で起こります。また、担当者によって解釈が微妙に異なることさえあります。
私たち行政書士の仕事は、単に書類を作るだけではありません。
「この条件では厳しいですが、計画をこのように変更すれば、許可の可能性が出てきますよ」
「今はダメですが、来年の見直しの時期を狙って申請しましょう」
といった、実現可能なルートを提案することこそが、本当の役割だと思っています。
4. まとめ:大切な土地を活かすために
「親から継いだ土地なのに使えないなんて…」と肩を落とす前に、一度、農地専門の行政書士や、地元の農業委員会に相談してみてください。
ご自身で役所に行くのが不安な場合や、専門的な言葉で反論できる自信がない場合は、私たち専門家が同行したり、代わりに事前協議を行ったりすることも可能です。
農地の手続きは、一度「不許可」の記録がつくと、それを覆すのが非常に難しくなります。最初の第一歩、事前の調査こそが最も重要です。
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🚜 農地転用・許可の難易度チェック 🚜
【第1問】記事内で「ワースト1位」として紹介された、行政が今後10年以上農業を振興すると決めた「農業の聖域」と呼ばれるエリアはどれですか?
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行政書士やまだ法務事務所
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