「最後まで面倒を見てくれたら、この自宅をあげるよ」
親御さんが同居のお子さんやお世話になった親族に対して、感謝の気持ちからこのような約束をすることは珍しくありません。
この「約束」を法的に実現する手段として、主にあげられるのが「遺言(負担付遺贈)」と「死因贈与契約」です。
「どちらも結果的に家がもらえるなら、約束が確実な契約(死因贈与)の方が良いのでは?」と思われるかもしれません。しかし、不動産の実務に携わる行政書士として、私は必ずこうお伝えしています。
「ちょっと待ってください。その選び方だと、数十万円単位で税金を損する可能性がありますよ」
今回は、一般的にはあまり語られない、しかし知っておかないと後悔する「税金と費用の落とし穴」について、分かりやすく解説します。
1. 「遺言」と「死因贈与」の決定的な違いとは?
まずは、両者の基本的な違いをおさらいしましょう。
負担付遺贈(遺言)
遺言書の中に「介護などの負担を条件に、財産を譲る」と書き記す方法です。
最大の特徴は「単独行為」であること。つまり、あげる側が一方的に作成でき、後で気が変われば書き直すことも可能です。
負担付死因贈与契約
あげる側ともらう側が、生前に「契約書」を交わす方法です。
こちらは「契約」なので、お互いの合意が必要です。一度契約すると、原則として一方的な撤回はできないため、もらう側にとっては「確実に財産が手に入る」という安心感があります。
ここまでは「安心感(拘束力)」の違いですが、実はここから先、「不動産を渡す場合」に限り、コスト面で大きな差が生まれます。
2. 落とし穴①:不動産取得税がかかるかどうか
不動産をもらった時に一度だけかかる「不動産取得税」。実は、財産をどうやって引き継ぐかによって、この税金がかかるかどうかが変わります。
- 遺言(相続人への遺贈):
原則としてかかりません(非課税)。 - 死因贈与契約(相手が誰であっても):
原則として課税されます。
たとえ相手が実の子供(相続人)であっても、「死因贈与契約」という形をとってしまうと、不動産取得税がかかってしまうのです。
固定資産税評価額にもよりますが、一般的な住宅であれば数十万円の請求が来ることも珍しくありません。これは遺言を選んでいれば払わずに済んだはずのお金です。
3. 落とし穴②:登記費用(登録免許税)の税率が5倍違う
不動産の名義変更をする際、法務局に納める「登録免許税」という税金があります。ここにも大きな落とし穴があります。
| 区分 | 相手が「相続人」の場合 | 相手が「相続人以外」の場合 |
|---|---|---|
| 遺言(遺贈) | 0.4% | 2.0% |
| 死因贈与 | 2.0% | 2.0% |
※ここでの「相続人」とは、配偶者や子供だけでなく、状況によっては代襲相続人となった孫や甥・姪なども含まれます。
ご覧の通り、相手が相続人である場合、遺言なら0.4%で済むところが、死因贈与契約だと2.0%かかります。その差は5倍です。
例えば、固定資産税評価額が2,000万円の土地建物の場合で計算してみましょう。
- 遺言の場合:2,000万円 × 0.4% = 8万円
- 死因贈与の場合:2,000万円 × 2.0% = 40万円
手続きの方法が違うだけで、登記費用だけで32万円もの差が出ます。これに前述の不動産取得税が加われば、総額での差はさらに広がります。
4. それでも「死因贈与」を選ぶべきケースとは?
ここまで読むと、「死因贈与は損ばかりで、やる意味がないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、コストがかかっても死因贈与を選んだ方が良いケースも確実に存在します。
それは、「相手との強い信頼関係の担保が必要な場合」です。
▼ 死因贈与が向いているケース
- 相手が法定相続人ではない場合(息子の配偶者・内縁の妻・知人など)
→ 法定相続人以外への承継であれば、遺言でも死因贈与でも登録免許税の税率は同じ(2.0%)になるため、登記費用のデメリットは消えます(不動産取得税の課税は残ります)。 - 介護の負担が非常に重い場合
→ 相手からすれば、「何年も介護したのに、遺言を書き換えられて何ももらえなかった」というリスクは絶対に避けたいはずです。税金を払ってでも「契約」として権利を確定させたいという要望が強い場合は、死因贈与が適しています。
5. 「負担付」にする際のリスク管理
最後に、遺言にせよ死因贈与にせよ、「負担付」にする際の注意点をお伝えします。
それは、「負担の内容を具体的にすること」です。
「老後の面倒を見る」という表現だけでは、どこまでやれば義務を果たしたことになるのか曖昧です。「週に〇回の訪問」「通院の付き添い」「施設費用の負担」など、できるだけ具体的に書面に残すことが、後のトラブル(「ちゃんと面倒を見てくれなかったから契約解除したい」等の争い)を防ぐ鍵となります。
まとめ:相手が「相続人」なら遺言がベター
今回のテーマである「損得」の結論をまとめます。
財産を渡したい相手が「相続人(子・配偶者、状況によっては甥姪など)」であるならば、コスト面では圧倒的に「遺言」が有利です。あえて死因贈与を選ぶ必要性は低いでしょう。
一方で、相手が「相続人以外」であれば、コスト差は縮まるため、「契約の確実性」を重視して死因贈与を選ぶ価値が出てきます。
不動産の承継は、法律だけでなく税金や費用のバランスを見て判断しなければなりません。「良かれと思ってやった契約で、相手に重い税金を背負わせてしまった」とならないよう、事前のシミュレーションが大切です。
ご自身の状況ではどちらが最適か、具体的な計算も含めてアドバイスさせていただきますので、お悩みの方はぜひ一度ご相談ください。
相続・遺言・贈与のご相談なら
行政書士やまだ法務事務所までお気軽にお問い合わせください。
お客様の「想い」と「財産」を守る最適なプランをご提案します。
📝 不動産相続の「税金」知識テスト
遺言(相続人への遺贈)ではなく「死因贈与契約」で不動産を引き継ぐ場合、相続人であっても原則として課税されてしまう税金はどれ?
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