将来支給される見込みの退職金も、財産分与の対象になりますか?行政書士がわかりやすく解説

はじめに「まだもらっていない退職金」はどうなる?

離婚を考えている方からすると、「退職金をどう分けるのか」は気になる問題の一つです。

特に40代、50代以降の離婚では、長年勤務してきた会社から将来支給される退職金が、老後の生活を支える大切な財産になることがあります。

そこで、「退職金はまだ受け取っていないし、手元にないから、財産分与の対象にはならないのでは?」と考える方もいらっしゃいます。

しかし、将来支給される予定の退職金であっても、一定の条件を満たす場合には財産分与の対象となることがあります。

今回は、「まだ受け取っていない退職金」がなぜ財産分与の問題になるのか、行政書士がわかりやすく説明します。

1.財産分与は「今持っている財産」だけが対象ではありません

財産分与というと、預貯金、不動産、自動車、株式など、現在手元にある財産を夫婦で分ける制度だと思われがちです。

しかし、財産分与とは「婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産を、離婚の際に清算して分ける」という性質を持っています。

そのため、将来受け取ることになる退職金についても、婚姻期間中の夫婦の協力によって形成された部分がある場合には、財産分与として分けるべき財産に含まれると考えられています。過去の裁判例や一般的な離婚実務においても、将来の退職金が確実性の高いものであれば、財産分与の対象として扱われることが多くなっています。

2.「将来もらえる予定」なら、必ず対象になるわけではありません

ここで注意したいのは、「会社に退職金制度があるから、退職金は必ず財産分与の対象になる」というわけではない点です。

将来の退職金が対象になるかどうかは、「実際に退職金を受け取ることがどの程度確実なのか(支給の蓋然性)」が重要になります。

例えば、以下のような事情がある場合には、財産分与の対象として認められやすくなります。

  • 勤務先に明確な退職金規程がある
  • 大企業や公務員などで、将来退職金が支払われる可能性が極めて高い
  • 定年退職までの期間が比較的短い

一方で、会社の経営状況が不安定であったり、自己都合退職時の支給額が不確かな場合などには、対象にならないケースもあります。「将来もらえる可能性がある」というだけで自動的に対象になるわけではない点を押さえておきましょう。

3.なぜ「将来の退職金」が財産分与の対象になるのでしょうか?

退職金は、一般的な性質として「長年の勤務に対する賃金の後払い」という意味合いが含まれています。

つまり、婚姻期間中に夫婦が生活を支え合いながら勤務を続け、その勤務期間に対応して将来支給される退職金は、夫婦の協力によって得られた財産といえるのです。

例えば、夫が外で働き、妻が家事や育児を担っていた場合、夫が仕事を続けられた背景には妻のサポートがあったと考えられます。そのため、将来の退職金であっても、婚姻期間(同居期間)に対応する部分については、離婚時の財産分与で考慮することになります。

4.退職金の「全額」が財産分与の対象になるわけではありません

ここも誤解されやすいポイントです。

例えば、夫が20年間会社に勤務しており、そのうち15年間が婚姻して同居していた期間だとします。この場合、将来受け取る退職金のすべてを半分にするわけではありません。

財産分与の対象となるのは、あくまで「婚姻期間(原則として同居していた期間)」に対応する部分のみです。独身時代の勤続期間や、すでに別居している期間の勤続分は、夫婦の協力によって形成された財産とは言えないため、対象から外して計算する(別居時を基準とする)のが一般的です。

さらに、実際に受け取るのが将来であることを考慮し、現在の価値に引き直して計算(中間利息の控除)するケースなどもあります。具体的な計算は、退職金規程、勤続年数、婚姻(同居)期間などを総合的に確認して判断されます。

5.離婚時に「退職金をどう分けるか」を決めておくことが大切です

将来の退職金を財産分与の対象とする場合、大きな問題になるのは「いつ、どのように支払うのか」です。

  • 「離婚時点で、見込額を計算して現在の預貯金などから支払う」
  • 「将来、実際に退職金が支払われた時点で、約束した割合や金額を支払う」

など、ご夫婦の状況に合わせて取り決めを行うことになります。

特に「将来支払う」という約束をする場合は注意が必要です。口約束だけでは、何年も先になって「そんな約束はしていない」「退職金が出なかった」といったトラブルになる危険があります。そのため、「どのような条件で、いくら支払うのか」を離婚協議書などに具体的に記載しておくことが極めて重要です。

6.「退職金があるか分からない」ときは、まず資料を確認しましょう

「相手は退職金をもらえるらしい」といった曖昧な情報だけで話し合いを進めるのは危険です。

話し合いを始める前に、可能であれば以下の点を確認しましょう。

  • 勤務先の退職金規程の有無
  • 退職金の計算方法や現在の勤続年数
  • 自己都合退職時の現在の見込額

将来の退職金は、現在の預貯金のように簡単に金額が確定するものではありません。だからこそ、分かっている事実や資料を一つずつ整理することがスタートラインになります。

7.行政書士としてお伝えしたいこと

将来の退職金は「まだ手元にないから」と見落とされがちな財産です。しかし、条件を満たせば大切な財産分与の対象となります。「どうせもらえないだろう」と決めつけず、まずは制度や状況を確認してみることをお勧めします。

そして、ご夫婦での話し合いがまとまったら、その内容を必ず書面に残しましょう。将来の退職金の支払いなど、長期的な約束が含まれる場合は、法的効力の高い「公正証書(離婚給付等契約公正証書)」にしておくことで、将来の未払いリスクを大きく減らすことができます。

行政書士は、ご夫婦で合意した内容をもとに、漏れのない「離婚協議書」や「公正証書原案」を作成するサポートを行っております。「将来の退職金も含めて、しっかりとした書面を残したい」とお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

※当事者間に争いがあり、話し合いがまとまらない場合や、相手方の退職金額を開示させるための法的な手続きが必要な場合などは、弁護士へのご相談が必要となります。


※本記事の内容は、執筆時点の法令・情報に基づき一般的な解説を提供するものであり、特定の事案についての助言・判断を目的としたものではありません。実際の手続きや対応方法は、状況・地域・関係機関・契約内容等によって大きく異なります。そのため、本記事のみを根拠として判断・行動されることはお控えいただき、個別の事情に応じた専門家への相談をおすすめいたします。本記事の内容に基づき生じたトラブル・損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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まだ受け取っていない「将来支給される見込みの退職金」は、離婚時の財産分与の対象になるでしょうか?

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将来の退職金は、条件を満たせば大切な財産分与の対象となります。未払いや後々のトラブルを防ぐためにも、取り決めは「離婚協議書」や「公正証書」として確実な形に残しましょう。書類作成のお手伝いは、ぜひ当事務所へご相談ください。

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