お金の貸し借りは、他人同士よりも、むしろ知人・友人・家族の間で起こりやすいものです。
しかし、関係が近いだけに「返してほしい」と言い出しにくく、返済が遅れれば遅れるほど、自分の心の負担も大きくなっていきます。
仕事・家庭・子育て・親の介護などで日々の生活に余裕がなく、「あの人に貸したお金、どうなっているんだろう…」という不安は、想像以上に重いストレスになります。
しかし、「訴訟まではしたくない」「関係がこじれるのは避けたい」と感じる方も多いはずです。
本記事では、裁判に頼らずに“返済へ向けて一歩踏み出すための手続き”を、行政書士の視点から分かりやすく整理します。
1. 知人・友人・家族だからこそ生まれる「なかなか言い出せない」
貸した相手が他人であれば、返済が滞っても毅然とした態度を取りやすいものです。しかし、相手が親しい人の場合、「強く言いすぎると関係が壊れそう」「相手を追い詰めてしまうのでは」という遠慮が先に立ち、請求が遅れてしまうことがあります。
その間にも月日は流れ、「あのお金、どうするつもりなんだろう」という不安だけが積み重なっていき、どうしていいか分からないまま苦しんでいる状態となります。
こうした状況を改善するために必要なのは、感情ではなく“手続き”という客観的な仕組みを使って冷静に進めることです。関係を壊さずに、しかし確実に返済へ向かうためには、段階的なアプローチが非常に有効です。
2. まずは現状を把握する。(証拠を集めて状況を整理しよう)
訴訟に進むつもりがなくても、最初に取り組むべきは「証拠の整理」です。借りた事実や返済の約束が分かるメッセージ、メール、メモ、振込履歴などを丁寧に見直します。ほんの一言のメッセージであっても、「あのお金、来月返すね」といった内容があれば、非常に重要な根拠になります。
もし証拠が弱い場合でも、まだ対処の余地はあります。例えば、後述する内容証明郵便によって相手の返済意思を引き出すことで、その返事自体が新しい証拠となるからです。「誤魔化され続ける状態を脱する」という意味でも、最初の整理は欠かせません。
また、相手が返済できる状況なのか、無理をすれば返せるのか、当面は難しいのか。こうした現実的な見立てをすることも、次のステップで大いに役に立ちます。
3. 裁判なしで“本気度”を伝える方法(内容証明郵便の効果)
「友人関係を壊したくない」「身内だから強く言えない」と感じる方が、最初の一歩として選びやすいのが内容証明郵便です。これは、郵便局が「誰が、いつ、どんな内容の文書を送ったのか」を証明してくれるものです。
普通の手紙やLINEとは違い、内容証明には“公的な重み”があります。相手が受け取った瞬間、「これは無視できない」と感じるため、しばらく音信不通だった相手から急に連絡がある、というケースもよくあります。
内容証明は、相手を追い詰めるためのものではありません。「これ以上あいまいにはできません」という意思表示の役割を果たし、話し合いのテーブルに戻ってきてもらうための重要なきっかけとなります。
また法律的にも意味があり、お金の貸し借りには「通常5年の時効」がありますが、内容証明による請求はこの時効の進行を一時的に止める効果があります。返済を求める意思を正式に伝えるうえで、非常に有効な手段なのです。
4. 話し合いができるなら“返済計画づくり”が解決への近道
内容証明によって相手が連絡をしてきた場合、そこで大切になるのが「現実的な返済プランの作成」です。相手の状況を考えずに全額を一括で求めると、かえって連絡を絶たれてしまうリスクがあります。
たとえば、毎月無理のない額を返していく方法や、ボーナス時期にまとまった額を返す方法など、いくつかの選択肢を探りながら話を進めると、双方が納得しやすくなります。
そして、返済方法がまとまったら必ず書面にして残しておくことが大切です。口頭での約束は、後から容易に覆されてしまいます。たとえ短い書面でも、「いつまでにいくら返すのか」という最低限の取り決めは、確実に効果を発揮します。
5. 争わずに“確実に返してもらう”仕組み(公正証書)
書面での合意をより強固にしたい場合、選択肢として検討したいのが公正証書です。公正証書とは、公証役場という公的な機関で作成する契約書で、その内容が国によって認められる特徴があります。
とくに金銭の返済については、「約束を破られたとき、裁判を経ずに差押えなどの強制執行に進める場合がある」という強力な効力を持っています。これは通常の契約書にはない特徴です。
ただし、公正証書は相手を威圧するために作るものではありません。むしろ、「きちんと返済していこう」という共通認識を作り、余計なトラブルを避けるための“予防的な仕組み”として大きな役割を果たします。
分割払いをする場合などは特に効果的で、「毎月いつまでにいくら返すのか」「もし一定期間滞納したらどうするか」といった取り決めを明確にできます。双方にとって安心感のある形で、返済の道筋を整えることができます。
6. まとめ:関係を壊さずに“きちんと返済してもらう”ために
知人や家族に貸したお金が返ってこない問題は、単なる金銭トラブルではありません。そこには人間関係や信頼、遠慮、罪悪感といった複雑な感情が絡み合っています。そのため、「訴訟は避けたい」という気持ちはごく自然なものです。
しかし、だからといって何もしなければ、時間だけが過ぎ、問題はますます深刻になります。最初に状況を整理し、内容証明で意思を伝え、必要に応じて返済プランや公正証書を検討する。こうした冷静なステップを踏むことで、裁判をせずに解決できるケースは少なくありません。
お金の問題は、放置すると心の負担が大きくなります。もし今、「このままではいけない」と感じておられるのであれば、一度専門家に相談し、あなたの状況に合った方法を一緒に検討してみませんか。関係を壊さずに、しかし確実に返済を進める道は、必ずあります。
📝 貸したお金を返すための法律クイズ 📝
【第1問】知人や家族に貸したお金の返済が滞っているとき、人間関係を壊さずに「これ以上あいまいにはできない」という本気度を正式に伝えるための、最初の一歩として最も有効な手段はどれですか?
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