配偶者が突然亡くなると、悲しみの中で葬儀や役所の手続き、年金、銀行、相続など、さまざまなことに対応しなければなりません。
「何から手を付ければいいのか分からない」というのは、決して珍しいことではありません。
相続のご相談を受けている行政書士としても、亡くなった直後は、すぐに遺産分けを急ぐよりも、まず「当面の生活を維持するため」の手続きから順番に進めることが大切だと感じます。
今回は、配偶者が突然亡くなった直後から、その後の相続手続きまでをどのような順番で考えればよいのかを行政書士の視点で分かりやすく整理します。
1.まずは死亡届など、亡くなった直後の手続きを行う
人が亡くなった場合、最初に必要になるのが「死亡届」の提出です。
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡地、本籍地または届出人の所在地の市区町村役場に提出することになっています。提出の際は、医師が作成した死亡診断書(または死体検案書)を添付します。
この時期は、葬儀や火葬などの手配もあり、残された家族にとって精神的にも身体的にも非常に負担が大きい時期です。
「相続のこともすぐに決めなければ」と焦る必要はありません。まずは死亡届、葬儀、火葬など、直ちに必要となることを最優先しましょう。
2.次に「生活を続けるためのお金」を確認する
配偶者が亡くなった後、残された方にとって直近の大きな問題になるのが生活費です。
亡くなった配偶者が年金を受給していた場合、まだ受け取っていない「未支給年金」が残っていることがあります。亡くなった方と生計を同じくしていた遺族は、亡くなった月分までの未支給年金を請求することができます。
また、亡くなった方の加入していた年金制度や遺族の年齢などの状況によっては、「遺族基礎年金」や「遺族厚生年金」を受け取れる場合があります。
「夫(妻)が亡くなったから、年金はもう入ってこない」と決めつけるのではなく、早めに年金事務所や市区町村の窓口で、ご自身がどの制度の対象になるかを確認することが重要です。
3.預貯金や保険など、亡くなった方の財産を確認する
生活面の手続きと並行して、少し落ち着いた段階で、亡くなった方の財産状況を確認します。
預貯金、不動産、生命保険、株式などの「プラスの財産」だけでなく、住宅ローン、借入金、クレジットカードの未払いなどの「マイナスの財産(負債)」も漏れなく確認する必要があります。
【注意点】銀行口座の凍結について
金融機関に配偶者が亡くなったことを伝えると、その時点で口座は凍結され、引き出しができなくなります。当面の生活費や葬儀費用が引き出せなくなるリスクがあるため注意が必要です。(※現在は「預貯金の仮払い制度」を利用することで、遺産分割協議の前でも一定額までは引き出しが可能です。)
また、「財産がありそうだから」と急いで預貯金を使ってしまうと、「単純承認」とみなされ、後から多額の借金が判明しても相続放棄ができなくなる恐れがあります。まずは財産と負債の全体像を正確に把握することを心がけましょう。
4.遺言書の有無を確認する(※勝手な開封はNG!)
財産の内容を確認すると同時に、亡くなった方が「遺言書」を残していなかったかを確認します。遺言書がある場合とない場合では、その後の手続きの進め方が大きく変わります。
自宅の金庫や引き出しを確認するほか、公証役場で「公正証書遺言」を作成していなかったか検索することも可能です。
【注意点】自筆の遺言書を見つけても勝手に開けない!
自宅で封をされた遺言書(自筆証書遺言)を見つけた場合、絶対にその場で開封してはいけません。開封する前に、家庭裁判所で「検認」という手続きを経る必要があります(※法務局の遺言書保管制度を利用している場合を除きます)。判断に迷う場合は、専門家に確認することをおすすめします。
5.相続人を確定し、遺産を整理する
遺言書がない場合、「誰が相続人になるのか」を確定させる必要があります。
配偶者は常に相続人となりますが、亡くなった方に子どもがいない場合などは、直系尊属(親)や兄弟姉妹が配偶者と一緒に相続人となります。そのため、「夫婦二人暮らしだったから、私が全部相続するはず」と単純に考えることはできません。
亡くなった方の「出生から死亡までの戸籍謄本」等を取得して相続人を確定し、財産目録を作成したうえで、相続人全員で「遺産分割協議(誰が何を相続するかの話し合い)」を行うのが基本的な流れです。
6.期限のある手続きは「いつまでか」を把握する
相続手続きの中には、期限が厳格に決まっているものがあります。特に以下の3つには注意が必要です。
- 相続放棄・限定承認(3か月以内):原則として「自己のために相続があったことを知った時」から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。借金が多い場合に重要です。
- 所得税の準確定申告(4か月以内):亡くなった方が自営業者だったり、一定額以上の年金を受け取っていたりして確定申告が必要な場合、相続を知った日の翌日から4か月以内に申告と納税を行います。
- 相続税の申告(10か月以内):遺産の総額が基礎控除額を超える場合、相続を知った日の翌日から10か月以内に税務署へ申告と納税を行います。
また、不動産を相続した場合は、令和6年4月1日から相続登記が義務化されており、原則として不動産を取得したことを知った日から「3年以内」に法務局への申請が必要です。
7.一人ですべて抱え込まないことも大切です
配偶者を亡くした直後は、精神的な負担も大きく、普段なら簡単にできることでも難しく感じてしまうものです。「自分ですべてやらなければ」と思い詰めず、必要に応じて専門家を頼ることも検討してください。
私たち行政書士は、面倒な戸籍収集(相続人調査)、金融機関の残高証明書取得(財産調査)、そして「遺産分割協議書」の作成など、相続手続きの土台作りをサポートすることができます。
一方で、相続手続きには各専門家の領域があります。
相続税の申告は「税理士」、不動産の名義変更(相続登記)は「司法書士」、そして遺産分割で揉めてしまった場合の交渉や調停は「弁護士」の領域となります。当事務所にご相談いただいた場合でも、必要に応じて適切な専門家と連携し、窓口となってスムーズに手続きを進めることが可能です。
まとめ|突然の相続では「急ぐこと」と「急がなくてよいこと」を分ける
配偶者が突然亡くなった場合、最初から相続全体を完璧に処理しようとする必要はありません。
まずは直後の役所手続きや葬儀、当面の生活費(年金など)を確保します。その後、遺言書の有無や相続人・財産の調査を行い、期限のある手続き(相続放棄の3か月、準確定申告の4か月、相続税申告の10か月)を把握していく順番で考えると、頭の中が整理しやすくなります。
気持ちの整理がつかない中で、慣れない役所や銀行の手続きをすべて一人で行うのは本当に大変なことです。
「何から手を付けてよいか分からない」「平日に役所や銀行に行く時間がない」という方は、ぜひ一度、行政書士にご相談ください。現在の状況を整理し、何から始めるべきかのアドバイスからサポートさせていただきます。
※本記事の内容は、執筆時点の法令・情報に基づき一般的な解説を提供するものであり、特定の事案についての助言・判断を目的としたものではありません。実際の手続きや対応方法は、状況・地域・関係機関・契約内容等によって大きく異なります。そのため、本記事のみを根拠として判断・行動されることはお控えいただき、個別の事情に応じた専門家への相談をおすすめいたします。本記事の内容に基づき生じたトラブル・損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。🪷 死亡直後の相続手続き 理解度チェック 🪷
配偶者が亡くなった直後、「当面の生活費」などで預貯金を取り扱う際、注意すべき点はどれでしょうか?
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