日常生活や事業を営む中で、トラブルに巻き込まれることは誰にでも起こり得ます。「お金を返してもらいたい」「深夜の騒音をやめてほしい」「離婚の条件を話し合いたい」といった問題が起きた際、多くの方は「裁判」をイメージされるかもしれません。しかし、裁判によらずに話し合いで解決を目指す方法があります。それが「かいけつサポート」です。
本日は、行政書士の視点から、この「かいけつサポート」の仕組みやメリットについて、法務省の資料に基づき分かりやすく解説いたします。
1. 「かいけつサポート(認証ADR)」とは何か?
「かいけつサポート」とは、民事上の様々なトラブルについて、裁判以外の方法で解決を目指す「裁判外紛争解決手続(ADR)」のうち、法務大臣の認証を受けた制度のことです。
当事者と利害関係のない公正中立な第三者が間に入り、双方の言い分を聴きながら、専門家としての知見を活かして柔軟な解決を図ります。法律で定められた厳格な基準をクリアした民間事業者が実施しているため、安心して利用できるのが特徴です。
2. 裁判との決定的な違い
トラブル解決の手段として裁判と比較した場合、いくつかの明確な違いがあります。
まず、裁判所の訴訟費用ではなく、認証を受けた民間事業者に支払う費用となる点です。手続の進行についても、民事訴訟法に従った厳格な進行が求められる裁判に対し、かいけつサポートでは利用者のニーズに応じた柔軟な進行が可能です。
また、裁判は原則として公開されますが、かいけつサポートは原則「非公開」です。他人に知られることなく、プライバシーや秘密を保護しながらトラブルの解決を図ることができます。
3. 「かいけつサポート」を利用する4つのメリット
かいけつサポートには、大きく分けて以下の4つのメリットがあります。
① 迅速な解決が期待できる
手続に時間や回数をかけずに解決を図ることができます。令和5年度の全体の取扱実績では、8割以上の事件が3回以内の期日で終了し、8割近くの事件が6か月以内に終了しています。
② プライバシーと秘密の保護
前述の通り一般に非公開で行われるため、プライバシーなどにきちんと配慮され、他人に知られることなく解決を図ることが可能です。
③ 専門家による納得のいく解決のサポート
取り扱うトラブルの分野に精通した専門家を交えた話合いによって、お互いが納得できる妥協点を探ることができます。
④ 執行力のある和解合意の締結
認証ADRで成立した和解のうち、その和解に基づいて民事執行をすることができる旨の合意がされたものについては、裁判所の決定を得ることにより、強制執行をすることができます(一部例外があります)。
4. オンライン(ODR)や土日・夜間にも対応
かいけつサポートを提供する民間事業者の中には、土日や夜間の調停に対応しているところもあります。また、デジタル技術を活用してADRをオンライン上で行う「ODR(Online Dispute Resolution)」に対応する事業者も増加しています。
メールやチャットツール、Web会議システム等を利用したオンラインでの調停が可能となることで、時間や場所の制約がなくなり、対面・移動に伴う心理的な負担が少なくなる等のメリットが期待できます。ご自身の都合に合わせたトラブル解決を目指すことが可能です。
5. 実際にどのようなトラブルで利用されているか
かいけつサポートは、多様な分野のトラブル解決に利用されています。具体的な解決事例をいくつかご紹介します。
- 家事事件(離婚協議に関するトラブル):互いに感情的になり話し合いができなかった夫婦が、認証事業者が間に入ることで冷静に相手の心情に耳を傾け、親権者や養育費等の条件を話し合いで解決できた事例。
- 敷金返還(原状回復費用に関するトラブル):借家の退去時に大家から示された費用に納得できず話し合いにならなかったが、1回目の調停期日で大家が申立人の主張を一部受け入れ、費用を減額することで和解した事例。
- 労働(不当解雇に関するトラブル):会社から不当な解雇を通告された事案で、雇用関係の終了と、相手方が請求額より減額した解決金を支払うことで和解した事例。
- 土地の境界(土地の越境に関するトラブル):隣家の住民が土地の一部を自分のものだと主張して家を建ててしまった事案で、調停期日を5回開催し、境界の合意を得て越境部分を買い取ってもらうことで和解した事例。
この他にも、金銭の貸し借りや、医療手術に関するトラブルなどにおいて、当事者間の話し合いによる解決実績があります。
6. 利用方法と手続きの流れ
実際に「かいけつサポート」を利用する場合の流れは以下の通りです。
- 認証事業者を選ぶ
法務省の「かいけつサポート」HP等から、ご自身のトラブルに対応している認証事業者を選びます。HPの「詳細検索」機能を使えば、ODR(オンライン調停)や土日祝・夜間に対応している等の条件を設定して検索することもできます。 - 認証事業者に申立て(申込み)を行う
手続の内容や費用について事業者からの説明を受け、よく理解した上で手続開始の申立てを行います。 - 話し合い・和解へ
事業者が申立てを受理した後、相手方が応諾すれば、話し合い・調整へと進み、和解合意を目指します。
7. 利用する際の注意点
かいけつサポートは、あくまで「話し合いでトラブルを解決する場」を提供するものです。そのため、以下の点に留意する必要があります。
- 相手が話し合いに応じなかったときや、話し合いをしても和解できなかったときは、解決できない場合があります。
- 相手に対して、話し合いに応じるように強制することはできません。
- トラブルの内容が、話し合いでの解決になじまない場合もあります。
8. おわりに
トラブルが発生した際、裁判という選択肢以外にも、専門家を交えて話し合いで解決を目指す「かいけつサポート」という制度があります。柔軟かつ迅速な解決が期待できるため、トラブルを抱えてしまった際の一つの選択肢として知っておくと有益です。
ご自身の抱える問題が話し合いによる解決に適しているかどうか、まずは制度の概要をご確認いただき、必要に応じて専門家や認証事業者へお問い合わせいただくことをお勧めいたします。
※本記事の内容は、執筆時点の法令・情報に基づき一般的な解説を提供するものであり、特定の事案についての助言・判断を目的としたものではありません。実際の手続きや対応方法は、状況・地域・関係機関・契約内容等によって大きく異なります。そのため、本記事のみを根拠として判断・行動されることはお控えいただき、個別の事情に応じた専門家への相談をおすすめいたします。本記事の内容に基づき生じたトラブル・損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
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