- 相続・遺言
- 2026年9月3日
【国庫帰属のリアル】「いらない土地を国が引き取る制度」の厳しい審査基準と、申請前に知っておくべき2つのおカネ
「相続した土地を使う予定がない」「遠方にある土地なので、管理……

こんにちは。奈良県で行政書士をしております山田です。
土地や家屋の相続手続き、あるいは不動産の有効活用についてご相談をお受けする中で、「私道の管理や工事」に関するお悩みを耳にすることがあります。
複数の人で持ち合っている「共有私道」においては、「道路の陥没を直したいけれど、他の共有者の同意が得られない」「新しく水道管を埋設したいが、行方不明の共有者がいて工事が進まない」といったご相談が寄せられます。これまでは、このようなケースで工事がストップしてしまうことが多々ありました。
しかし、令和5年(2023年)4月1日に施行された改正民法により、共有物のルールが大きく見直されました。法務省からも共有私道の管理等に関するガイドラインが公表され、以前よりもスムーズに対応できるようになっています。今回は、共有私道に関するルールの見直しについて、事実関係に基づき、実務的な視点からわかりやすく解説いたします。
複数の住宅が立ち並ぶ地域では、各戸の所有者が少しずつ持分を出し合って、一本の私道を共有しているケースがよく見られます。長年生活していく中で、道路の舗装が剥がれたり、生活インフラである水道管やガス管の引き直しが必要になったりすることがあります。
これまでの法律では、共有している私道に何らかの変更を加える場合、原則として「共有者全員の同意」が必要と解釈されることが多くありました。そのため、共有者の中に一人でも反対する人がいる場合や、相続が繰り返されて誰が所有者なのか分からない場合、さらには引っ越し等で連絡が取れない共有者がいる場合、道路の修繕すらできず、生活インフラの整備に重大な支障をきたすケースが社会問題となっていました。
こうした状況を改善するため、民法が改正され、私道の修繕や管理に関する要件が緩和・明確化されることになりました。
この民法改正の大きなポイントは、共有物(私道)に対する行為を「保存行為」「管理行為(軽微変更を含む)」「変更行為」の3つに分類し、それぞれに必要な同意の要件を明確にしたことです。
法務省が公表したガイドライン(「共有私道の保存・管理等に関する事例」)によって、どのような工事がどの分類に当てはまるのかが具体的に示されました。これにより、「全員の同意がなければ何もできない」というこれまでの誤解が解け、一定のルールのもとで私道の管理を進めやすくなりました。
次項からは、それぞれの分類について具体的な事例を交えながら解説します。
見直しの結果、最も対応しやすくなったのが「保存行為」です。保存行為とは、共有私道の現状を維持するための行為を指します。
たとえば、以下のような行為が保存行為に該当するとされています。
これらの行為は、他の共有者の同意を得ることなく、各共有者が「単独」で行うことができると明確にされました。これにより、日常生活に危険を及ぼすような私道の劣化やトラブルに対して、気づいた人がすぐに修繕や対応を手配できるようになりました。
単なる維持・修繕を超えて、私道の性質や形状を少し変えるような行為については、「管理行為」または「軽微変更」にあたります。これらは、共有者の「持分の過半数」の同意があれば実施できることが明確になりました。
ガイドラインで示されている具体的な事例としては、以下のようなものがあります。
以前は、こうした工事も「全員の同意が必要」と厳格に解釈されて工事が頓挫することがありました。しかし、形状や効用の「著しい変更」を伴わない軽微な変更であれば、持分の過半数で決定できることが示されたため、生活インフラの整備が非常に進めやすくなりました。
要件が緩和されたとはいえ、私道の用途や形状を根本から変えるような行為には、これまで通り「共有者全員の同意」が必要です。
これは「形状又は効用の著しい変更」を伴う変更行為と呼ばれ、以下のようなケースが該当します。
このように、他の共有者の権利に重大な影響を及ぼすような行為については、独断や過半数では進めることができません。実務上は、計画している工事が「軽微変更」にあたるのか「著しい変更」にあたるのかを、ガイドラインに沿って慎重に判断していくことになります。
今回の法改正で実務的に非常に助けとなるのが、「所在等不明共有者」がいる場合の対応策が創設されたことです。
いざ共有私道の工事(過半数または全員の同意が必要なもの)をしようとしても、共有者の中に引っ越し等で行方不明になっている人や、相続手続きが放置されて誰が相続人か分からない人がいると、同意を得ることが物理的に不可能です。従来はここで行き詰まっていました。
改正法により、地方裁判所に申し立てを行うことで、所在が不明な共有者を「除外」して、残りの共有者の同意(または過半数)だけで管理行為や変更行為を実施する許可を得られる制度ができました。手続きには時間と手間がかかりますが、長年放置されていた私道問題の法的な解決ルートが用意されたことは大きな前進です。
共有私道のルールが明確化・緩和されたとはいえ、他の共有者に何の連絡もなしに独断で工事を進めれば、感情的なもつれからご近所トラブルに発展するリスクがあります。法律上は過半数で進められる工事であっても、まずは関係者に丁寧な説明を行うことが大切です。
また、同意を得る前提として、「現在の共有者が誰で、それぞれどれだけの持分を持っているのか」を正確に把握しなければなりません。そのためには、法務局で登記簿謄本や公図を取得し、事実関係を調査することが解決の第一歩となります。もし登記名義人が亡くなっている場合は、戸籍をたどって相続人を調査する必要があります。
当事務所では、法務局での図面や登記簿の取得、共有者の調査、同意を得るための書面作成など、行政書士として事実関係の整理をサポートしております。私道の管理や相続に関するお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
※本記事の内容は、執筆時点の法令・情報に基づき一般的な解説を提供するものであり、特定の事案についての助言・判断を目的としたものではありません。実際の手続きや対応方法は、状況・地域・関係機関・契約内容等によって大きく異なります。そのため、本記事のみを根拠として判断・行動されることはお控えいただき、個別の事情に応じた専門家への相談をおすすめいたします。本記事の内容に基づき生じたトラブル・損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。【第1問】
「共有している私道の舗装に小さな穴が開いて危険なので、アスファルトで緊急補修したい」場合、改正民法での正しい手続きはどれでしょうか?
【事務所概要】
行政書士やまだ法務事務所
代表者:山田 勉
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